メイド喫茶と雪姫たんとその他諸々
さあさあさあ! 今日は美少女ゲームを予約しにいざアキバへ出陣!
地元からアキバまでは片道1時間以上! 今日は午後から雪姫たんに会いに行く予定があるから早く出かけてとんぼ返りしなければならん!
しかし早く出かけるとなると通勤ラッシュにバッティング! ぼくたん満員電車なんてやだやだやだー!
そこで僕は510円を投資して座席定員制列車『湘南ライナー』に乗り込んだ。8時半過ぎに出る列車だから空いていてリクライニングシートの隣の席には誰も座らなかった。ポッチャリ体型の僕にはゆったりしてて丁度良い。だが東京駅からは一般的な通勤電車に乗り換えなきゃいけないから、比較的空いている後方の車両に乗ってストレスを抑制した。
大体にして、なんでこの僕が知りもしない他の人間と同じ空間を共有せねばならんのだ! 早くどこでもドアを開発したまえ!
試練を乗り越えた僕は、やっとの思いでアキバに到着! 駅ナカや街ナカには萌~え萌~えキュン! な広告があちこちに掲示されていて目の保養になる。
お目当ての美少女ゲームを予約したら、早速メイド喫茶でお食事だ。
「いらっしゃいませ!」
このメイド喫茶は『お帰りなさいませご主人様』ではなく『いらっしゃいませ』と客を出迎えるタイプだ。
「いらっしゃいましたメイドたぁん! さぁ! 僕を蹴って踏んで罵って!!」
僕は絨毯の上で転げ回っておねだりした。早く早くぅ!
「お客様、毎度申し上げておりますが、当店ではこのようなサービスは行っておりません」
笑顔で丁重にお断りされてしまったが、僕は諦めない。
「イヤンイヤーン! そんなこと言わないでぇ!」
「お客様……」
「は・あ・い? なんでちゅかぁ!?」
僕の熱意が通じてようやくご奉仕する気になったかにゃん?
「てめぇ毎度毎度キモいんだよ!! 他の客の迷惑になるからてめぇは出禁だ!! とっとと帰れキモオタおじゃる〇!!」
なるほど、僕は他所の地域に行くと『おじゃる〇』と呼ばれるようになるのか。
「イヤーン! か・い・か・ん! うふっ♪♪」
店から締め出された上に出禁をくらった僕は仕方なく空腹のまま地元へ戻り、駅の近くにあるラーメン屋でランチを済ました。塩ラーメンの脂多め麺硬めとネギ丼のセットにギョーザを追加! できれば無料で平らげたいところだが、ラーメンは鮮度が命! ここは公正に代金を支払った。
◇◇◇
「男幼女男幼女男男幼女、幼女男幼女男幼女、男の娘男幼女♪ あっ、職員と思しきBBAグヘッ!」
腹を満たした僕は、ちょうど下校時間になったので、雪姫たんが通う小学校の前で校門から出る生徒を区別しながら出待ちをしている。 男の娘を除き、野郎は赤ん坊だろうがジジィだろうが同じだが、女子は赤ちゃん、幼女、JC、JK、JD、レディー、BBAでカテゴライズする。僕の射程範囲は幼女からレディーまでだが、紳士のたしなみとしてレディーとBBAの境界線は伏せておこう。
「ちょっと、職務質問してもいいですか」
雪姫たんを驚かそうと隠しきれない身体を電柱に隠して校門を覗いていると、背後から突然警察官に肩を叩かれた。
「僕は職になど縛られない自由の身さ!」
「ああ、もしかしてニート? 見るからにそうだよね。じゃあ住所は?」
「東海岸北八の零の一億番だ」
「北は五丁目までしかないけど?」
「フッ、キサマに教える義理などない」
僕はリアルとは隔絶された存在。この世界の僕の住所などまるで意味がない。
「なら署までご同行願おうか。近所の人から小学校の前に怪しい男がいるって通報があったんだよ」
警察官が僕の腕を引っ張り連行しようとする。コイツ、普通体型のクセに腕力強いぞ。
「待て待て! 僕は近所の子を迎えに来たんだ!」
「その子の名前は?」
「御伽野雪姫たん」
「そんな漫画みたいな名前あるか!」
警察官は僕を引っ張りとうとう歩き出した。
「おい! 雪姫たんに失礼だぞ!」
「いいから来なさい!」
「綺羅星くーん!」
はわっ! この天使のようなロリロリヴォイスは!
「雪姫たん!」
雪姫たんは連行される僕にキラキラオーラのとびきりの笑顔で駆け寄って来た。一緒にいる雪姫たんの学友二人は不審な目でこちらを見ている。警察官は立ち止まり、雪姫たんの方へ振り返った。
「ほら見ろ! この天使のようなプリティーでキュアキュアな子が雪姫たんだ!」
「チェッ、せっかく久しぶりに検挙できると思ったのに……」
「わーははははー!! ざまぁみろべろべろばー!!」
「ふざけやがってこのクソが。ただでさえうぜぇツラが余計うぜぇ」
吐き捨て警察官は撤退して行った。
はーっはっはー! 僕は今日も完全勝利だ!