表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/240

86区  県高校総体開幕!

挿絵(By みてみん)


大型連休後に行われた3000mタイムトライ。

葵先輩と朋恵が好走した。


久美子先輩が転校し、なにか思うところがあったのか。

新しい学年になってから葵先輩の走りが変わりつつあった。


今までは私や麻子に負けて当たり前。

取りあえず、付ける所までついていこうと言う練習スタンスだったが、最近は隙さえあれば勝ってやると言った感じで、積極的な走りを見せる。


今日も最初の600mは私の前を走っていたし、晴美によると2600mまでは麻子と競り合いだったらしい。


朋恵にいたっては、わずか一ヶ月で自己ベストを3分半近くも更新した。


「朋恵ちゃん、15分24秒」

晴美がタイムを読み上げると、息切れをしながらゴールした朋恵の顔が笑顔に変わる。


「タイム的にはまだまだだが、那須川は化けるかもしれないな。短期間でこれだけタイムを短縮すると言うことは、才能がありそうだ」

永野先生もタイムを聞いて感心していた。


だが、褒められた当の本人は

「いえ……。今のタイムでもかなりキツイです。みなさんと同じタイムで走ったら、死んでしまいます」

と、かなり弱気だった。


この日のタイムトライを見て、6月に行われる県高校総体の出場種目が決定した。


3000mに葵先輩、麻子、紘子。

1500mに私が。800mには紗耶がエントリーとなった。


1500nへの出場が決まった時に、まったく正反対の気持ちが心に浮かぶ。


中学以来の1500mを素直に嬉しいと思う気持ちと、いったい自分がどこまで走れるのだろうかと言う不安だ。


順位で言えば、もちろん優勝が目標だ。


だが、私にはもうひとつ大きな目標があった。

この前えいりんが出したタイムを0、01秒でも良いから上回ること。

もちろん、それが容易でないことも理解してる。


えいりんと私で条件が違うのは分かっているが、それでも同じ種目を走る以上、タイムで負けたくない。


そんな思いで日々一生懸命に練習をしていたら、あっと言う間に一ヶ月が過ぎ、気が付けば県総体の日となった。


私達2年生にとっては、初出場となる県総体だ。


県総体当日の朝、集合場所の教員駐車場にはほぼ全員がそろっていた。

いや、正しくは部員は全員そろっていた。


肝心の顧問と副顧問がいないのだ。


「綾子先生、駅伝の時もぎりぎりだったわよね」

携帯で時刻を確認し、葵先輩は顔をしかめる。


「まぁ、永野先生と由香里さんは一緒に来るとは思いますけどぉ」

「あの……。由香里さんって誰ですか」

朋恵の質問を聞き、1年2人は由香里さんに会ったことが無いと言う事実に気付く。


晴美が由香里さんの説明を始めると、駐車場にハイネースがやって来る。

運転手は由香里さん、助手席には永野先生が座っていた。


降りて来た2人に、全員であいさつをする。


「おはよう。よし、みんなそろってるな」

永野先生が私達の顔を確認し、あいさつを返す。


その後ろで、由香里さんがすごく不機嫌そうにしていた。


「聞いてよ。綾子ったら私が迎えに行った時にまだ寝てたのよ」

「ちょっと由香里、それは生徒に言わないでって言ったでしょ」

「確かにそう言われたけど、私は言わないって約束してないもん」


2人のやりとりを見ていると、子供の喧嘩を見ているようだ。

それを横にいた紘子に小声で言うと、「いやいやいや」と否定された。


「あれのどこがですが、あれは反則ですし」

「あの……。同じ人間なのに、どうしてこうも差が出るんですか」


紘子に続き、朋恵までもが由香里さんをじっと見て悲しそうな眼をしている。


「人間には持つ者と持たざる者がいるのよ。こればっかりは、逆らえないわ」

と、2人には辛い現実を教えておく。


「鍋のフタとメロンくらい違っても呼び名が一緒って……笑えないし」

紘子は本気で悔しそうな声でぼそっと呟いていた。


そんなやり取りの後、わたし達は由香里さんの車で競技場へと向かう。


「え……陸上競技場ってこんなに大きいんですか」

生まれて初めて競技場を見たと言う朋恵が、感動の声を上げる。


「朋恵ったら、初々しすぎ。小学生じゃないんだから」

麻子の一言に、私と紗耶、晴美に葵先輩が一斉に麻子を見る。

記憶が確かなら、昨年初めて競技場を見た麻子は、思いっきり子供のようにはしゃいでいたはずだ。


その後、全員でスタンドに上がり、プログラムを確認する。


「えっと……藤木んさんが出場する800mが6組3着プラス6だから……」

プログラムを見ながらつぶやく朋恵に麻子が素早く反応する。


その早さと来たら、飼い主が帰って来たことを察知した犬のようだ。


「朋恵、陸上初心者だから分からないでしょ。教えてあげ」

「つまり……予選が6組あって上位3名が無条件で次に進んで、それ以外でタイムが良かった6名も次にいけるってことで合ってる? ひろこちゃん」


「さすが朋恵。教えたことはすぐに覚えるし」

昨年覚えたばかりの知識を自慢げに披露したかったのだろう。

麻子は悔しそうに2人を見る。


よく考えたら「6―3+6」と表記されているものを6組3着プラス6と言えている時点でしっかり理解してる証拠だ。


「さぁ、わたしはさっそくアップに行ってこようかなぁ」

紗耶は荷物をまとめ、出発の準備を始める。


桂水高校が出場する種目で言うと、初日に800mの予選、準決勝、3000mタイム決勝。


2日目に800m決勝。3

日目に1500mの予選、決勝が入っている。


紗耶が決勝に残らなかった場合、2日目は誰もレースが無い。


紗耶が出かけたあと、プログラムを見ていた葵先輩が、「うん?」と唸る。


「3000mに城華大付属は1年生が2人も出てるわね。雨宮桂と工藤知恵って子。雨宮桂は紘子が前に言っていた全中優勝者でしょ」

「工藤知恵? それ昨年の県中学駅伝1区区間賞です。城華大付属に行ってたなんて知らなかったし。てか桂も何も言って無かったし。あ、ちなみにその子中学の時はソフトテニス部です」

紘子の解説に、城華大付属にまた1人強力なメンバーが入ったことを知る。


3000mには、城華大付属から山崎藍子もエントリーしていた。

今回も私と藍子は別種目でのエントリーだ。

会ったらなにか言われそうだな


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ