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82区  理学部生物科棟

挿絵(By みてみん)


姉との食事も終わり、さっそく姉の実験室に向かう。


学食を出るとタイル張りの路面に、ビルのような建物がいくつも並ぶ通りや、ガラス張りの近未来的な建物などを見た。


本当に別世界に来たような感覚だ。


「さぁ、ここよ」

姉がとある建物の前で立ち止まる。


『理学部生物科棟』建物の玄関にそう書かれた看板が設置されていた。


私は初めて姉の学部と学科を知った。

昨年姉の部屋を掃除した時に、教科書がたくさんあったが、題名だけでは内容がよく分からなかったし、忙しくて中身まで確認していなかった。


姉と中に入り、エレベーターに乗る。

この12階が卒研室なのだそうだ。


エレベーターは止まること無く一気に12階まであがる。


元々が小高い丘に立っているせいもあり、12階から見える景色はまさに絶景だった。


遠くに熊本城も見える。

そう言えば、約一年前にあそこでえいりんに出会ったっけ。


そんなことを思っていると、姉に早く来るように言われる。

廊下を三度曲がり、とある部屋の前に着く。


「中は土足厳禁だからこれ履いて」

私が渡されたスリッパに履き替えたのを確認し、姉はその部屋のドアを開ける。


「お疲れさまです。遅くなりました。あ、そこで女子高生見つけたんで、お持ち帰りしちゃいました」


姉がそう言って中へと進む。

私も「失礼します」と小声で言い、中へと入る。


理科室。私の第一印象はその一言だった。


まさに理科室で使われるような頑丈な机が三つ程並んでおり、パソコンが何台も設置され、顕微鏡や、試験管、ビーカー、ピンセット、三角フラスコ、さらには名前も分からない器具がところせましと置いてある。


「え? 冗談かと思ったら、本当に知らない人がいるんですけど。すいません、学部と学科はどちらで?」

部屋の入り口付近に座っていた1人の男性が私に聞いてくる。


「えっと……桂水高校普通科、澤野聖香です」

思わず自己紹介をしながら、山口県立をつけた方が良かったかなと思ってしまった。


でもそんな考えは杞憂だった。


「おい、マジで女子高生だ。澤野、どこから連れて来たんだよ」

奥に向かって歩いている姉にそこまで言って、その男性はまた私を見る。


「あれ? 澤野? もしかして、妹さん?」

私は、はいと頷く。

部屋にいた他の人も歓声を上げる。

なんだが妙に歓迎されている。


「あんたらどれだけ女子高生好きなのよ。てか、峰木先輩まで」

姉は白衣を着てまた私の前に現れる。

初めて見る姉の白衣姿はなんとも新鮮だった。


「いや、高校生って懐かしいなって。私、峰木弥生。修士2年だから麻衣より2つ年上か」


峰木さんは言い終わると握手を求めて手を出して来る。

それに私も答える。


「で、麻衣。なんで妹連れて来たん?」

「私のミスです。妹が遊びに来るの、明日だと思ってました。その子、高校の理科教師が将来の夢なんです。色々と教えて貰えると助かります。私、今から無菌室行くんで」


姉はそれだけ言って、いそいそと試験管や薬品を準備し、部屋を出て行った。


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