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64区  決戦!高校駅伝!!  その2

挿絵(By みてみん)


「開会式ってこんなに長いんだ。来年は出たくないかな」

「本当に長すぎ」

「いくらなんでも、これは無いわよね」


どうもみんな同じことを思っていたらしい。


体育館の正面玄関を出てすぐの所に永野先生は立っていた。


「お疲れ。私のころから駅伝の開会式が長いのは変わって無いな。選手宣誓をやった時にずっと緊張してて嫌な思い出があるんだよな。っと、ほらエントリーリスト。一応目を通しておけよ」


あぁ、やっぱり選手宣誓をやったことあったのか。

そんなことを思いながら、みんなと一緒にエントリーリストを覗き込む。


見たいのはただ一校。城華大付属だけだ。


1区宮本加奈子(3年)

2区桐原亜純(3年)

3区岡崎祐(2年)

4区貴島由香(1年)

5区山崎藍子(1年)

補員三輪さくら(2年)

補員岡本美月(3年)


エントリーリストに並んだ5人の名前と区間配置は十分に予想の範囲内だった。


それでもこうしてはっきりと宮本さんと走ることが決まると、不思議と緊張して来る。


県高校総体、県選手権、ともに3000mで優勝している人と走るのだ。

もちろん、私が1区で流れを作ることが城華大付属に勝つための重要な条件だと言うことは認識している。


それはつまり宮本さんとの差を1秒でも少なくすること。

宮本さんからリードを奪えれば一番良いのだが……。


「噂をすればなんとやらだな」

永野先生がそう言ってため息をつく。


いったい何を言っているのか一瞬分からなかったが、永野先生の視線が私達の後ろを見ていることに気付き、後ろを振り返る。


そこには城華大付属のメンバーが立っていた。


「あ、澤野だ。いやぁ、澤野と対戦出来るの楽しみだわ」

宮本さんが私を見るなりワザとらしくそう言ってくる。

そう言いながらもあきらかに視線は山崎藍子の方を見ていた。


藍子は誰が見ても分かるくらい、はっきりと悔しそうな顔をする。


「澤野聖香。あなたなんでアンカーにいないのよ。私が直接叩き潰してあげるっていたわよね」

「いや、藍子が1区に来ればよかったんじゃない?」

私が言うと、藍子は一瞬だけ泣きそうな顔になる。


「澤野って容赦ないのね」

「聖香、傷口に塩を塗ってるかな」

城華大付属側からも桂水高校側からもダメ出しを食らってしまう。


「そう言えば、選手宣誓を見て思ったんですけど、宮本さんってキャプテンじゃないんですね」

私は必死でごまかすように、話題を変えることにした。


「ああ。亜純は信頼されてるからね。私よりもよっぽどキャプテンに向いてるわ。なんたって城華大付属始まって以来、初の文化部出身だし」


その言葉に、桂水高校のメンバー全員が驚きの声を上げる。


確かに走ると言うのはどんなスポーツでも共通する基礎体力だ。

それゆえに、他の運動部でも足の速い人は確かに存在する。


現に私が中3の時、県中学駅伝で3位になった駅伝メンバーも、1人はテニス部を引退して夏休みから駅伝部に合流した同級生だった。


しかし、文化部で足が速いと言うのはなかなか聞いたことがない。

ましてや、城華大付属のレギュラーを取れるほどまで速いなんて。


しかも、よく考えたら桐原さんはインターハイにも出ているし、800mの県記録も持っていたはずだ。


「すごい才能をお持ちなんですね」

「その代り頭が悪いけどね。天は二物を与えずってやつだね」

葵先輩の一言に苦笑いをしてそう答える桐原さん。


そして、なぜ私の方を見るのかしら? 桂水高校女子駅伝部のメンバー達。


「そろそろ戻らないと監督に怒られますよ。あと、さやっち明日は負けないからね」

「わたしだって負ける気はないんだよぉ」

城華大付属の貴島由香は、去り際に紗耶とライバル心をぶつけ合う。


「分かったかしら澤野聖香。私はあなたにこう言うセリフが言いたいの。まぁ、今回は許してあげるわ」

藍子がそう言って歩き始めると、それを追うように、他の城華大付属メンバーも立ち去って行く。


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