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52区  桂水高校女子駅伝部 1年生初陣!  その8

挿絵(By みてみん)


「永野……」

「綾子?」

宮本さん、藍子、貴島由香の3人が、なぜかその場に立ち尽くす。


「加奈子先輩?」

葵先輩が不思議そうに声を掛けると、宮本さんが我に返り大きく深呼吸をして、永野先生の方を見つめる。


「もしかして、全国高校駅伝で城華大付属高校が、初の全国制覇をした時にアンカーを走られた、永野綾子さんですか?」


宮本さんの急な質問に、永野先生も状況が把握出来ずに「ええ」と短く返事をするだけだった。


でも、藍子達にはその肯定の一言で十分だったようだ。


「入学してすぐに、阿部監督から当時のビデオを見せてもらいました。本人を前にして、すぐに気付かなくて申し訳ありませんでしたが、永野さんの走りには大変感動しました。私達もああ言う走りが出来るように、日々頑張っています。今日はお会いできて光栄です」


宮本さんが言うと、藍子も貴島由香も、「私達もです」と頷いていた。


「あ……そうなんだ。ありがとう。てか、阿部監督、毎年そのビデオを見せてるってことだよな」

宮本さんにそう返すものの、突然の展開に、永野先生はどう反応していいか分からないと言ったふうに、由香里さんの方を見る。


「良かったじゃない。あなたのことを尊敬してくれる人がいて」

笑いながら由香里さんが言った直後に、後ろのふすまが開き、髪に随分と白髪が混じった初老の男性が入って来る。まさに今話題に出た、城華大付属の阿部監督だった。


「よかったですね。あの時のあなたの走りは、今でも多くの人の目標となり、感動を与えていますよ」

話が聞こえていたのだろう。

阿部監督は大広間に入って来るなり、永野先生を見て笑顔でそう言う。


「阿部監督。監督にそう言ってもらえると非常に光栄です」

永野先生は深々とお辞儀をして阿部監督にお礼を述べる。


「さて、お互いに生徒も待っていますし、食事にしましょう」

阿部監督の一言で、みんなその場から移動して食事となった。


それにしても、先ほどのやりとりで永野先生のすごさを改めて認識させられた。永野先生みたいになりたいと思った自分の気持ちは、間違っていなかったようだ。



食事が終わってみんなでお風呂へと行く。


「はるちゃんの胸が大きいのがムカつくんだよぉ」

紗耶が湯船で晴美の裸をみて、わけの分からないことを突然言い出す。


「いや、それは何というか、みんなは走ってばかりだからじゃないかな」

晴美の一言にうなだれる麻子と……私。


「いや、逆転の発想だ。そうよ、あたしの胸が小さいのはバスケと駅伝で運動をしまくってるせい。本当はもっと大きいはずだもん」

麻子の一言は、もはや言い訳にしか聞こえなかった。

笑う葵先輩は晴美ほどではないがしっかりと大きさもあり、張りのある綺麗な形をしている。


「別に気にしても仕方ない」

そう言う久美子先輩の胸は、麻子よりも小さい感じがした。

と、久美子先輩と目が合う。


「でも、聖香よりは大きい」

もしかして、心を読まれた? いや、多分、私の目線が胸に行っていたせいだろう。


その時、入口の扉が開く。

永野先生と由香里さんが入って来た所だ。

永野先生は、入ると同時にじっと私達を見る。


「うーん。佐々木、大和、藤木、湯川、北原、澤野の順かな。澤野が2位にしっかりと差を付けて1位でゴールってとこか」

それが私達の胸の大きさ順であることはすぐに分かった。


えぇ、私が断トツで小さいのは理解してますとも。

そう、麻子的に言うなら、中学生の時から走ってばかりだったから。


「まぁ、これに比べれば私も含め、どんぐりの背比べって感じだけどな」

晴美と葵先輩の間くらいの大きさの胸をした永野先生が由香里さんの胸を指さす。


由香里さんに初めて会ったのは、夏合宿の打ち上げだった。

あの時も圧倒的だと思っていた。


しかし、こうして直接見ると、圧倒的と言う言葉すら、言葉足らずのような気がする。


もう、駅伝部の中では天上天下唯我独尊。

世間一般的にみても史上最強と言った感じだ。

いや、もちろん言葉の意味が微妙に間違っているのは分かっている。


「ちょっと綾子。あんたって人は」

怒る由香里さんを紗耶がじっと見ている。

その視線に由香里さんも気付いたようだ。


「えっと……藤木さん?」

「由香里さん、何カップですかぁ」

紗耶が真面目な顔をして、由香里さんに質問する。

「えっと……」と返答に困る由香里さんに代わり「聞いて驚け、由香里はIカップだ」と永野先生が自慢げに言う。いや、なぜ永野先生が自慢げな顔になるのか?


と、由香里さんが永野先生の頭をパシッと叩く。


「余計なこといわないで」

「いえいぇ、女同士なんだし、良いじゃないですかぁ」

紗耶がニコニコして由香里さんに返す。

そして、湯船から出てスタスタと由香里さんの前に行き、両手を由香里さんの胸に当てる。


「うわぁ、すごい弾力だよぉ! そしてこの柔らかさ」

なぜか嬉しそうな紗耶と、驚きと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらも、言葉を出せない由香里さん。なんとも不思議な光景だ。


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