表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/240

51区  桂水高校女子駅伝部 1年生初陣!  その7

挿絵(By みてみん)


永野先生は部屋割りを考えるのが面倒くさかったのだろうか。

永野先生と由香里さんで一部屋。私達6人で大きな一部屋と言う、ものすごく簡単な部屋割りだった。


「わたし、廊下側が良いんだよぉ」

「ちょっと紗耶! なに勝手に決めてるの」

「じゃぁ、私はテレビの前かな」

「それは先輩に譲るべき」


部屋に入るなり、みんな寝る場所の取り合いを始める。

初めての遠征宿泊でテンションが上がっているようだ。


全員での宿泊は夏合宿でもしているのだが、あの時はきつすぎてそれどころでは無かった。


「ほんとお前ら元気だよな」

いつの間にか、永野先生がやって来ていたらしく、私達の姿を見てため息をつく。


「たのむから、こういう時に怪我だけはしないでくれよ。駅伝は全部で5区間。つまりうちの駅伝部は補員がいないんだ。誰かの怪我はそのままチームの棄権を意味するからな。あ、それと食事は1時間後の18時から2階の大広間な。風呂はその後自由に入ってくれ。ミーティングを20時からやるから、それまでには済ますように」


用件だけ使えると、ふすまを閉めて永野先生は部屋から去って行った。

私達はその後も寝る場所を決めるために、かなりの時間を要し、気が付けばもう18時になる寸前だった。


急いで2階の大広間に行くと、すでに数名の人がいた。

しかもよく見ると城華大付属の陸上部だ。


「加奈子先輩、優勝おめでとうございます。すごい走りでしたね」

葵先輩が、城華大付属の宮本さんを見つけ、優勝を称えていた。

そう言えばこの2人は中学の先輩、後輩の間柄だ。


「澤野聖香。私の走りをしっかりと目に焼き付けたのかしら?」

後ろから私を呼び声がする。

振り向かなくても、その声が山崎藍子であるのは明白だ。


「見たわよ。2位おめでとう。で、私の走りは見てくれたかしら?」

「え……。あ、明日見てあげるわ。決勝で。私に見て欲しかったら、決勝まで残りなさい」


どうも私の予選の走りは見ていなかったらしい。

でも私が予選で落ちたとは、これっぽちも思ってないあたりは山崎藍子らしかった。


そんな山崎藍子に、「素直じゃないなぁ」と声を掛ける一人の城華大付属の選手。


その顔を見た瞬間に、見覚えがある感じがした。

私がそう思うと同時に、後ろから紗耶が声を上げる。


「あれぇ? きじゆーだよぉ。え、今城華大付属にいるのぉ? 今まで気付かなかった」

「えぇ! さやっち? うそ、桂水高校なんだ。てっきり、聖ルートリアか泉原学院のどちらかで決まってると思ってた」


その見覚えのある選手が、驚いた顔で驚きのセリフを口にする。

紗耶が聖ルートリアや泉原学院に行くと思っていた? それってつまり……。


「いやぁ、両校から推薦自体は来てたんだけどねぇ。ってそれは中学で最後に会った時に話したよねぇ。どちらにも、見学に行ったんだけどぉ……。なんか肌に合いそうになくて。両方断っちゃったよぉ。その後は色々あって今は桂水高校の女子駅伝部だよぉ」


「え?紗耶、聖ルートリアや泉原学院から推薦来ていたの?」

「決勝? 紗耶ってそんなに速かったの?」

葵先輩がビックリした顔で紗耶に質問する。

麻子にいたっては口を大きく開けて驚いていた。


「あれぇ、わたし話たことありますよぇ?」

紗耶が不思議そうな顔でこっちを見る。私も含め、桂水高校駅伝部全員が首を横に振る。それを見て紗耶は苦笑いしていた。


「いまさらですが、実は私、推薦来てたんですよ。でも、今話したとおり、結局断ったんですけどねぇ。で、こっちは貴島由香さん。中学の時に、よく1500mの決勝で競り合ってたんですよぉ。まぁ、あまり勝った記憶はないんですけどぉ」


紗耶に言われて思い出した。

そうだ、どこかで見たことがあると思ったら、中学の1500m決勝で見たのだ。


「それにしても、中学生の時に決勝ではるか前を走っていた、藍子とか澤野さんと同じチームってお互い変な感じだよね、さやっち」


なんだか恥ずかしそうに私と藍子を見て、貴島由香は笑いながら紗耶に同意を求める。


紗耶も、「だよねぇ。わたしも部活紹介で、眼の前に聖香がいた時は、本当に驚いたんだよぉ。中学の時は、決勝前とかに会っても声も掛けられなかったし」と嬉しそうに貴島由香に喋る。


貴島由香は、うんうんと何度も頷き、そのセリフが間違っていないことを認める。


「確かに。藍子と澤野さん、あと市島さん。3人は走りも別格だし、いつも3人でいて声掛けにくかったしね」

「私達って、そんな感じに見えたの?」

「由香。大げさに言わないで。確か私、一度あなたと話したことあるわよ」


貴島由香のセリフに、私と藍子はお互いの顔を見た後で2人に意見を述べる。


「なんだお前ら、えらく早いな」

私達の横にあるふすまが当然開いたと思ったら、永野先生と由香里さんがやって来て、私達の会話を中断させる。


「いや、18時から食事って言ったのは、永野先生ですけど」

「そうですよ、綾子先生が遅れてどうするんですか」


麻子と葵先輩の言葉に一番最初に反応したのは、意外にも永野先生ではなく、城華大付属のメンバーだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ