表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/240

44区  盛り上がれ文化祭!!  その6

挿絵(By みてみん)


店を閉め、みんなで美術室に行く。

晴美が作った作品を見るためだ。


晴美は駅伝部と美術部を兼任しているものの、割合的には駅伝部に顔を出していることの方が多い。


一度、そのことについて晴美に聞いてみたのだが、

「大丈夫。その辺は美術部の先生とも話がついてるから。それに私が今やりたいことって学校より家の方が捗るかな。むしろ、美術部に顔を出してる時は例の全国高校駅伝ポスターの図案を考えたりしてるだけかな」

そう言って笑っていた。


美術室につくと晴美が扉を開けて一番に入って行く。

中は2、3人程展示を見ている人がいたが、いたって静かだった。


「あの一番奥にあるボードの、上段右端が私の作品」

晴美が指差す方を見ると、ランナーの姿が描かれた縦書きの絵が飾られていた。


絵の中のランナーは全体的に躍動感に溢れ、今にもこっちの世界に飛び出して来そうだった。


ランパンとランシャツが揺れ、風を切って走っているのが容易に想像できる。胸元などから女性ランナーであることは分かるが、女性でありながらも力強い腕振りをして、細い体ながらもしっかりと筋肉が付いてる。


まさに力強さと、しなやかさが共存しているといった感じだ。


「すごい良い走り……」

私は自然とそんな言葉を口にする。

が、みんなが一斉に私を見る。


「意外に自分では気づかないもんだねぇ」

「どう見ても聖香」

「あんた自分の走り見たことないの?」

「ほんと。どっからどう見ても聖香のフォームね」

みんなが口々に意見を述べる。


「え……。でも顔が全然違う……」

「そりゃ、そのまま本人ってわけにもいかないから、顔ぐらいちょっといじったかな。まさか、聖香が自分だと気付かないとは。かなり予想外かな」

晴美にいたっては若干困っていた。


「これ、夏合宿の時のインターバルをやってる時の聖香の写真が元になってるの。てか、この作品の見どころは、近づいたら分かるかな」

晴美がみんなの背中を押しながら、絵の方に近付く。


「あ、よく見たら小っちゃい写真がいっぱいだ。なるほどぉ。小さい写真がたくさん集まって大きな絵が出来てるんだねぇ。よく見たら、肌の部分はグランドの部分だったりするんだよぉ」


「あら? これは総体ね。あ、部室で撮った写真も」

「合宿のもあるし、普段の練習風景も。晴美あんたいつのまに撮ったの?」


麻子が不思議そうに晴美を見る。

晴美が普段からデジカメを持ち歩いていたのは知っていたが、こんなにも写真を撮っていたのは私も知らなかった。


この一枚の大きな絵の中に3000枚近い写真が入っているのではないだろうか。


その証拠に、撮られた私達がカメラ目線の写真は、全体の一割くらいしか見当たらない。


「こう言うのモザイク画って言うんだって。ちなみに私、この作品は全部パソコンで編集してるし、絵もまったく描いて無いかな。写真を集めて、加工しただけ。こう言う芸術もありかなって」


晴美は少し照れくさそうに自分の作品の解説をする。

その後、紗耶がこの絵を欲しいと言いだすと、「印刷するだけだから明日にでも渡せる」と言う晴美の一言で他のみんなも欲しがり、結局私も含め全員に配ってくれることになった。


でも、自分がモデルというのは正直、ちょっと恥ずかしいものがあった。


そして、文化祭2日目。

私のミス桂水効果は相変わらずで、朝から駅伝部の模擬店は行列が出来ていた。


この日も2回ほど永野先生が買出しに走りに行ったものの、12時にはすべて完売。あまりの忙しさに、その時点で葵先輩が「もうこれで閉店にしましょう。これ以上は無理!」と叫ぶと誰も反対しなかった。


ちなみに私はこの日も、水着姿で写真に握手、サインと大忙しだった。

こうして2日間の文化祭も無事に終了。


駅伝部の模擬店は、『売り上げ校内1位』と言う結果に輝いた。


「まさに聖香のミス桂水効果ね。ちなみに明日になったら魔法は溶けるから」


葵先輩が何を言っているのか、最初はまったく分からなかった。

しかし、文化祭が終わり、次に学校に登校して私はその意味を知る。


けいすい祭の最中はあれだけ騒がれていたのに、通常生活が始まると、私を見て騒ぐ人は誰もいなかった。まるでミス桂水がなかったかのような雰囲気だ。


「面白いでしょ。あのミス桂水って効果を発揮するのは文化祭の最中だけなのよ。それが終わるとまったくの無意味。不思議よねぇ。去年もそうだったし」


葵先輩が笑う。それが分かってる葵先輩って、もしかして昨年の……。

そう思って聞いてみたが、「さぁねぇ」と、はぐらかされてしまった。



差出人:澤野聖香

題名:文化祭で

本文:

昨日今日、うちの高校文化祭だったんだけど、なぜか私がミス桂水高校に選ばれてしまった。ほとんど運だけで。恥ずかしかった。


差出人:市島瑛理

題名:いいじゃん

本文:

さわのん可愛いもんね。次はミス桂水市を目指してみてよ(笑)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ