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37区  永野綾子についての物語  その3

挿絵(By みてみん)


「こちら第2移動です。城華大付属永野、また1人抜きまして、これで単独4位。さらにもう目の前には2位3位の選手が迫って来ています」


「こちら、先頭を追う第1カメラの映像ですが、すでに第2移動車が見える位置に来てますね。先頭を行くのは熊本代表鍾愛女子。その80m後方に2位3位の選手が映っていますが、そのさらに後ろ、第2移動車と蛍光オレンジのユニホーム、4位の城華大付属、永野の姿も見えています。さぁ、残り2キロを切って、レースはどのように動くのでしょうか」


本当に永野先生の走りはすごかった。


この時、永野先生が高校3年生。

私が後2年経って同じ高校3年生になった時に、果たして同じ走りが出来るのだろうか。


そもそもこの時の先生は何を思って走っていたのだろう。やはり、優勝を目指していたのだろうか。それとも、4区であったブレーキを帳消しにするためだろうか。こればかりは、本人に聞いてみないと分からないし、聞いてみたいとも思った。



「さぁ、ラスト1キロでついに城華大付属が2位集団に追い付きます。追いつきますが、まったく眼中にないと言った感じで、あっさりと抜いて行きます。これで山口県代表城華大付属が単独2位に上がりました。先頭との差はわずかに10秒。この勢いで行くと追い付きそうだ」


アナウンサーが言う通り、永野先生はじわじわと先頭との差を詰めて行く。まさに驚異的としか言いようがない。


その走りを目の当たりにして、私は寒気すら感じ始めていた。


「さぁ、先頭がトラックに戻ってきました。そして、それとほぼ同時にトラックに戻って来たのは2位の城華大付属永野。ここからトラックを500m走ります。と、ここでついに永野が先頭に追い付く。城華大付属永野、鍾愛女子井村、両者が一歩も譲らないと言った感じで並走しています」


合宿の時に教えて貰ったので、結果は知っている。

それでも、目が離せない。

結果がどうこうでは無い。

永野先生の走りから目が離せないのだ。


両者の並走はラスト200mまで続き、そこから永野先生がラストスパートを仕掛けた。


その走りは、あのペースでここまで走って来て、いったいどこに力が残っているのかと、問いたくなるくらいに、ものすごいラストスパートだった。


当然、相手もまったく付いていけず、大きく離されることとなる。


「これはすごい。まるで200m走だ。井村まったく付いていけません。これはもう優勝は間違いないでしょう。昨年悔し涙を飲んだ山口県代表城華大付属高校。順調に思われたレース、まさかの4区アクシデント。しかしそれを帳消しにして、なお余りある永野のこの走り。さぁ、両手を上げて笑顔でゴール。タイムは1時間7分13秒。城華大付属高校初優勝!」


アナウンサーがそう言った直後、永野先生はその場に倒れ込んでしまう。


役員が慌てて駆けつけ、先生を運んでいく。

どうも力を使い切ったようだ。


それを心配しながらも、アナウンサーは今の永野先生の区間タイムが15分18秒で大幅な区間記録だと興奮気味に言っていた。向こう20年は破られることのない記録だろうと解説を付け加えて。


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