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199区  それは予告も無く突然に その1

挿絵(By みてみん)


合宿が終わった次の日は軽めのジョグだけで練習は終了した。


「合宿が終わると今度は課外授業への参加も始まるし……。まさに受験生だよね」

部活帰りに晴美とコンビニでアイスを買って、自分の置かれた境遇について語る。


「考えても仕方ないかな。受けたい大学が決まってるだけ聖香は前に進んでると思うよ。私はこの前の三者面談で、随分と大変だったかな」

その時の状況を思い出しているのだろか、晴美はため息を付く。


「そう言えば、修学旅行の時にそれとなく言ってたけど、晴美は将来何になりたいの?」

「え……。それはちょっと言うのは恥ずかしいかな」

私の質問はまったくの予想外だったのだろうか。

晴美の顔が急に赤くなる。暑さが原因ではないことはあきらかだ。


「受験する大学が決まったら教えるかな。あ、それと明日は美術部に出るから。合宿で撮った写真も整理したいし」

回答を保留しつつも、晴美は無理矢理話題を変えて来た。


私もそれ以上は無理に聞かないことにした。


それに、晴美と朝待ち合わせをする場所まで来ていた。

つまり帰る時はここが別れ道となる。

私はここから直進、晴美は右折する。


「じゃぁ、また明後日」

「うん。明日も頑張って走ってね」

短い言葉を交わして家路を急ぐ。


家に帰って昼御飯を食べ、昨日録画していたドラマを見た後で勉強を始める。


自分で言うのもなんだが、3年生になってから随分と勉強を頑張っていると思う。


入学当初、大の勉強嫌いだった自分がここまで頑張れるのは、高校教師になりたいと言う夢と、えいりんと同じ学校に通いたいと言う目標があるからこそだ。


やはり夢や目標と言うのは大切だと、最近になって身に染みて感じる。


途中休憩を挟みながらも、夕方まで勉強をしていると携帯が鳴った。


見ると永野先生からだった。


わざわざ電話して来るあたり、なにかあったのだろうか。


通話ボタンを押した時、熊本合宿についてだろうと考えていた。


「もしもし」

私が電話に出ても、永野先生は沈黙していた。


合宿のことでは無い気がする。

私の直感がそう告げていた。


「澤野、ちょっと聞くんだが……。お前今日は佐々木と一緒に帰ったか?」

「はい。と言うより、登下校は基本、晴美と一緒ですけど。いつも決まった場所に待ち合わせて、帰りもそこまでは一緒です」


私が答えると永野先生は「そうか……」と呟いてまた沈黙してしまった。


「あの……。それがどうしたんですか?」


私が聞き返すと、電話の向こうで小さなため息が聞こえてきた。


「澤野。落ち着いて聞いてくれ。今、佐々木の御両親から学校に連絡があったそうだ。多分、澤野と別れた後なんだろうな。佐々木が部活の帰り道に交通事故にあって……。先ほど搬送先の病院で亡くなったと」


足元でガタンと大きな音がした。

下を見ると確かに今の今まで持っていたはずの携帯が床へと落ちていた。


手の力が抜けたのだ。

携帯を拾わなくては。


そう思った瞬間に足の力も抜け、自分の体が力なく崩れ落ちて行き、大きな物音がしたのが聞こえた。

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