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18区  桂水高校女子駅伝部初陣!!  その5

挿絵(By みてみん)


どこで応援しようかと、ゴールと第2ゲートの間でうろうろしているとオーロラビジョンに映像が映る。


この時ふと、山口と熊本ではビジョンの位置が反対なんだと言うことに気付いた。


映像は3組目のスタート前を映し出していた。

すでに選手はトラックに入り、流しなどをしている。

スタートはもうすぐだ。


選手たちがスタートラインに並びだすと、それをカメラが捉えビジョンに流す。


藍子が大きく映った。

先ほど久美子先輩の800mで見たのと同じ蛍光オレンジ一色のユニフォーム。胸の所に黒色で『城華大付属』とネームが入っている。


他にも『聖ルートリア』や『泉原学院』と言った強豪校のユニホームも映る。


ちなみに私がこれらの学校が強豪校と分かるのは、どちらからも推薦が来ていたからだ。


まぁ、今となっては昔の話だ。


次に映ったのは葵先輩だった。

真新しい桂水高校の青と白のユニホームは、やはり光輝いて見える。


そう思いながら、映像を見ていてあることに気付く。

高校総体は各種目に3名までエントリーできるのだが、蛍光オレンジのユニホームが全部で3人いた。


つまり、城華大付属は学校から出場出来る3名全員が3000mで一番速い3組目にエントリーしていることになる。


さすがとしか言いようがなかった。


そして、選手が全員スタートラインに並ぶ。

遠くで聞こえるピストルの音と共にレースが始まった。


スタートしてすぐに1人の選手が飛び出て先頭に立つ。


山崎藍子だ。


藍子が一人先頭に立つと後ろに8人の集団が続く。

その中に葵先輩も含まれている。

それに城華大付属の選手が2人共この集団にいた。


集団がトラックを半周する。

競技場のあちこちから応援が聞こえる。

私達が荷物を置いている場所を見ると、麻子と紗耶、久美子先輩が必死で応援してる姿が見えた。


「葵先輩、良い位置です。落ち着いて行きましょう」

もうすぐ目の前を通過する先輩に向かって、私もありったけの声を出して叫ぶ。


しかし、その声に一番反応したのは山崎藍子だった。


私の声が聞こえたのだろう。

先頭を引っ張りながらも、私の方をギロッと見る。

まるで、「あなたそこにいたのね」と言わんばかりだ。


藍子を含めて9人の先頭集団が形成され、その5m後ろに第二集団が出来る。


今のところは2つの集団でレースは動いているようだ。


その後も9人の先頭集団は一塊のまま走り続ける。

トラックを2周する間に、後ろの集団との差が20mくらいに広がっていた。


応援をしながらなので確かなことは分からないが、どうも先頭集団のペースがわずかながらに上がっているようだ。


今のところ葵先輩も7番手でしっかりと集団の中にいる。

このまま頑張って付いて行ってほしい。


先頭が1000mを通過する。

ここでレースが動いた。


藍子の後ろに付いていた聖ルートリアと泉原学院の生徒が先頭へと出る。


抜かれた藍子がそのまま先頭に喰らい付いて行く。

その後ろにもう1人城華大付属の選手が付く。


これで先頭が4人。

そこから3m開いてさらに別の城華大付属の選手が引っ張る5人の集団が新たに出来る。


葵先輩はこの集団の最後尾。

全体で言うと9番目だ。 

     

見た感じ、葵先輩のペースはさっきと変わって無い。

やはり先頭がペースを上げたのだろう。


葵先輩はスタートから落ち着いた走りをしている。

その証拠にフォームにはまだゆとりがあり、肩も上がっておらず腕も楽に触れていた。


集団が私の前を通過して行く時、3番目を走っていた藍子があきらかにこっちを見た。


「藍子頑張れ! 落ち着いて行こう」

こっちを見て来た藍子に応援で返事を返す。


さっきほど麻子に「仲が悪いの?」と尋ねられたが、けっして私と藍子は仲が悪い訳ではない。


確かに喋ればきつい言葉も出るが、基本的に会えば良く喋るし、中学時代は同じ種目に出れば、えいりんを含め3人でダウンジョグをすることもあった。


まぁそうは言っても、レースとなれば3人とも「負けたくない」と言う気持ちが、まるで炭酸ジュースを振って開けた時のように、ものすごい勢いで溢れて来て、いつも競り合いになっていたが。


私を見た藍子はいったい何を思ったのだろうか。


また前を向くと、先頭にたった2人の選手を再度抜きにかかり、また先頭に立ってみせた。


もしかすると今のは、「さぁ、しっかりと私の走りをみてなさいよ」と言う意味だったのかもしれない。


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