表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/240

150区  Let's 修学旅行♪その8

挿絵(By みてみん)


しばらくアーケードを歩き、5月に来た時と同じ店に入る。


やはり同じように熊本名物をたくさん注文し、運ばれて来るのを待っている時のことだった。


「で、本当のところ聖香と市島さんの関係ってどんな感じなのかな」

晴美め、また話をぶり返して……。

と思ったが、今度はえいりんが真面目に悩んでいた。


「まぁ、こうやって会うし、メールだって頻繁にするし、親友であることは間違いないわね。でも走ることに関しては絶対に負けたくないかな……。今年はインターハイか都大路で勝負出来ると思ってたけど、それも叶わなかったし」

「あはは。来年こそは都大路に出れるように頑張るから」

私が言うと、えいりんがふと遠い目をする。


「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ほととぎす。私には無理だな」

突然えいりんが徳川家康の性格を表したとされる歌を詠み出した。


「えいりん?」

私が声をかけるとえいりんは大きくため息をつく。


「鳴かぬなら 鳴かせに行こう ホトトギス 命短し 恋せよ乙女」

今度は、聞いたことも無い歌を詠む。

私を含め、誰もが首を捻る。


「あ、気にしないで。私の生き様を考えてただけだから。ほら、料理来たよ。せっかくだから色々食べて」

初めて見る食べ物ばかりのせいか、紗耶も麻子も晴美も料理を食べるのに夢中になる。


半年ぶりに食べる熊本名物に、私もついつい箸が進んでしまう。


熊本名物を堪能した後は、普通にショッピングを楽しむ。

主には洋服だった。


「てか、これじゃ熊本に来た意味が無いでしょ?」

「いや、市島さんは熊本での生活に慣れ過ぎてるかな。思い出して。桂水市に住んでいたらどこに服を買いに行くか」


晴美の一言にえいりんが妙に納得をする。


「あ、そろそろ駅に向かわないと」

気付けば、集合時間が差し迫って来ていた。

帰りはバスではなく、新幹線で帰ることになっている。


しかも、自由時間後に熊本駅に現地集合となっているのだ。

私は多少土地勘があるが、知らない土地で知らない場所に現地集合と言うのも、いかがなものかと思うのだが。


「ついでだがら熊本駅まで行くよ」と言うえいりんと一緒に、5人で路面電車に乗り込む。


席があまり空いておらず、私とえいりん、他3人で別れて座ることになった。


「どうだった、さわのん? 半年ぶりの熊本は?」

「うん? やっぱり楽しかった。頑張って大学に受かって、こっちで生活できるようにしないと」


「ねぇ、ひとつ思ったんだけどさ、私もさわのんも合格したら、ルームシェアしない? 2LDKくらいの部屋をお互いの部屋と共通のリビングで別けてさ」

「それも良いかもね。家賃少なくて済むし」


私が返答すると、えいりんがものすごく嬉しそうな顔をしてこっちを見る。

が、すぐにその表情が暗くなった。


「あ、あのさぁ。これから先、何があっても私達って親友でいられるかな。いや、具体的に言うと陸上で何かあったとしても」

陸上で何かあってもと具体的に説明するわりに、えいりんが言おうとする意味がよく分からなかった。


「どうしたの急に? えいりんが何を言いたいのかよく分からないけど……。私はえいりんのこと、中学の時から親友でありライバルと思ってるから。走ることが理由で、えいりんとの友情にヒビが入ることはないわよ。仮に、私がインターハイの決勝でえいりんに勝とうとも、都大路で私がえいりんを抜こうとも、それと友情は別物」

「ちょっと、なんで私が負けること前提で話が進んでいるわけ」

暗くなっていたえいりんの表情が急に明るくなる。

なんともころころと表情が変わるものだ。


「いや、なんかここで自分が負けることを言ってしまうと、本当にそうなった時に負けそうで。まぁ、なにはともあれ、本当に陸上と友情は別物よ」

その言葉に安心したのか。

それとも自分の納得の行く答えだったのか、えいりんは「うん」と静かに頷く。


熊本駅に着くと、私達はお土産を選び始める。


修学旅行に来ている駅伝部のメンバーが、私、晴美、麻子、紗耶の4人。

残っているメンバーが葵先輩、紘子、朋恵、由香里さん、永野先生の5人。


永野先生の分はみんなでお金を出し合って買い、後はそれぞれが、1人にひとつずつ買うことになった。


家への分などもあるので各自がバラバラで見て回る。


麻子は大阪で働く兄や弟の分まで買うと言っていたし、晴美は親戚にも買って帰ると言っていた。


そのせいか、合流した時には、みんな両手にいっぱい荷物を抱えていた。


「えいりん、色々とありがとうね」

集合時間がせまり、えいりんに別れを告げる。


「いやいや、こっちも楽しかったよ」

「市島さん、都大路頑張ってねぇ。テレビの前でしっかり応援するから」

「ありがとう。じゃぁ、少しでもテレビに映るように頑張ります」

みんなで手を振ってえいりんを見送り、私達も集合場所へと急ぐ。


私は2度ほど熊本に来たことがあったので特に問題なかったが、やはり何組かは迷子になったようで、危うく置いて行かれるところだったと集合場所にきて苦笑いをしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ