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148区  Let's 修学旅行♪その6

挿絵(By みてみん)


一通り、城内を見て外へと出る。


と、紗耶が何かパンフレットのような物を熱心に見ていた。


「紗耶? 何を見ているの?」

「さっき貰ったんだよぉ。一口城主制度ってのがあって。一口一万円の寄付でお城の中に名前が残せるんだって。ほら、中を見ている時に、いっぱい名前があったでしょ。あれだよぉ」

その一言に麻子が真っ先に喰い付く。


「面白そう。紗耶、ちょっと見せて」

言い終わるより早く、紗耶からパンフレットを奪い、麻子が目を通し始める。


「ねぇ、みんなでお金を出し合って、名前を残さない?」

「1人2500円。まぁ、私は賛成かな」

「楽しそうだねぇ。わたしも良いよぉ」

「まぁ、良いんじゃない。で、なんて名前にするの?」

私の質問にみんなが頭を抱える。


「じゃぁ、みんなの名前を一文字ずつ取って、藤野麻美とか?」

「いや、それじゃ誰だか分からないでしょ」

麻子のセンスに苦笑いをするしかなかった。


「麻子。これ団体でも登録できるかな。普通に桂水高校女子駅伝部でいいんじゃない?」

麻子からパンフレットを取って晴美が一読した後に提案する。


誰からも反対意見は出ずに、それで登録することになった。


バスへと戻る経路で通過する門で受付をやっているそうなので、そこで登録を済ませる。


「高校を卒業したらみんなで旅行を兼ねて見に来ようか」

私の提案にみんなが賛成する。

どうやら、昨日話していた年に一度の旅行、第一回目は熊本になりそうだ。


午後からの班別行動。

事前の引率教員との打ち合わ時に、ダメ元とほんの少しの冗談で、えいりんが県選手権を走った陸上競技場を提案したらあっさりと通ってしまった。


これには言った私達の方が驚いてしまう。


よくよく聞くと、その競技場はプロサッカーチームのホームグランドにもなっているらしく、サッカー好きな引率の先生はそれを知っていたのだ。


バスに乗って競技場へと行き、施設の管理人さんの案内で、色々な場所を見せて貰う。


普段は見れない記録室やアナウンス室なども見せてもらい、隣接している屋内運動場などにも見学へ行く。


将来、インストラクターになりたいと言っていた麻子は、興味津々で色々な質問をしていた。


お礼を言って無事にホテルへと帰って来る。


「そう言えば、明日会う友達とは連絡取れてるの?」

「うん、大丈夫だよ。明日、上通りのサンメルクカフェで8時に待ち合わせにしてるから」

麻子の質問に何気なく答えると、3人が怪訝な顔をする。


「聖香、すっかりこっちに慣れてるかな」

「いや、そもそも私が何度か熊本に来たことあるから、今回の修学旅行先が決まったんでしょ?」


私は必死に説明するが、「それはそれ。これはこれ」と意味不明な言葉が帰って来た。



予定時刻の8時にサンメルクカフェへ行くと、入口の側にえいりんが立っていた。


「うわ、えいりんが制服を着てる」

「こら、さわのん。約半年ぶりにあった第一声がそれ?」

私達と同じように、ブレザーを着たえいりんが苦笑いをしていた。


ただ私達の制服が黒っぽいのに対し、えいりんの制服は濃紺色をしており、随分と印象が違って見える。


立ち話もなんだからと、お店の中に入り、注文をして席に座る。


「てか、えいりん……。よくそんなに食べられるよね」

 えいりんの前に置かれた焼き立てパンの山を見て、私はつぶやく。


「今日はさわのん達と会って、昼間は走れないだろうからと、早朝に20キロ走ったらお腹空いちゃって」


「大丈夫なの? 都大路前にそんなに距離を踏んで」

「私達の学校ではこれくらいは普通の練習よ」

さすが都大路優勝校はレベルが違う。


と、私の横に座っていた麻子が私の脇腹をつつく。


「ちょっと、とりあえず彼女の紹介を」

えいりんに聞こえないように小声でそっと耳打ちをして来る。


「ああ、ごめん。えっと、こっちが桂水市出身で今は鍾愛女子高校にいる市島瑛理。昨年は都大路で区間賞を取ったくらいすごい人」

私の説明にえいりんは、「紹介になって無い気がするけど」と笑う。


「で、私の左隣りにいるのが、湯川麻子。桂水高校駅伝部キャプテン。右隣が藤木紗耶。えいりんも知ってる? 彼女、中学生の時に1500mで決勝に残ってたりしてたんだけど。それとえいりんの隣にいるのが佐々木晴美、マネージャ兼美術部。私とは幼稚園から一緒」


「うん。さわのんが人を紹介するのが下手なのが分かった」

「こう言う時は、もうちょっとフレンドリーでいいんじゃないかな」

「そうだよぉ、せいちゃん。堅苦しすぎ」

みんな、私を笑いながら批判したあとで、思い思いに自己紹介を始める。


私も流れにのって言おうとすると、「いやあなたのことは十分に知ってるから」と止められてしまう。


初対面なのにこう言う時は全員の息がぴったりと合うのはなぜなの。

結局そのまま話が盛り上がり、気付けば1時間半も立っていた。


えいりんが桂水市出身と言うこともあり、わりとすんなりと仲良くなったようだ。

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