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137区  決戦!2度目の高校駅伝!その4

挿絵(By みてみん)


まずは前に追いつかなければならない。

自分のペースが若干オーバーペースなのは十分に分かっている。

それでも今はスピードを緩めるわけにはいかない。


まだ走り出して200mも行ってないが、スタート時に比べ、工藤知恵の姿はあきらかに大きくなっていた。


もう差は3、4秒しかないのではないのだろうか。


工藤知恵が前へと進むたびに、ショートカットの髪がリズムよく跳ねている様子が確認出来る程までに、私は差を詰めていた。


おそらく向こうも、足音や周りの声援で、差を詰めれていることを知っているはずだ。


いや下手をすると、レース前から詰めれてしまうことを覚悟しているかもしれない。


それが確信に変わったのは、1キロ直前で工藤知恵に追い付いた時だった。


元々工藤知恵と並走する気が無かった私は、一切スピードを緩めることなく彼女を追い抜く。


それと同時に、彼女が私の後ろにぴったりと付いて来たのだ。

工藤知恵を引き連れた状態で1キロを通過する。


自分の時計を見ると3分3秒と言うタイムを表示していた。


私より6秒前に工藤知恵が中継所を出たので、彼女の1キロがおよそ3分9秒だろう。


どやら、私も工藤知恵も3000mの自己記録ペースで最初の1キロを入ったようだ。


まぁ、私は1度しか3000mを走っておらず、あくまで3000m障害のタイムから永野先生が計算した予測上の記録だが。


タイムが分かった瞬間に工藤知恵はすぐに離れていくだろうと思った。お互いのペースがあまりにも違いすぎるからだ。


しかし、その予想はあっけなく外れてしまう。


もうすぐ2キロ地点を通過しようかと言うのに、相変わらず工藤知恵は私の真後ろにいた。


ぴったりと張り付くように、歩幅のリズムまで合わせている。


自分の区間で1秒でも突き放しておきたい私にとっては、予想外の出来事と言っても良い。


ただ、朝の散歩でも感じた通り、私自身の調子は良い。

しっかりと脚も動いている。


もうすぐ2キロと言うところで急に応援が増える。

ちょうど道路の反対側が第3中継所なのだ。

つまりは4区のスタート。

紗耶と付添いの朋恵がいる場所だ。


「せいちゃん、頑張ってぇ!」

「澤野さん、ファイトです」

2人の声が聞こえるが、そちらを向く余裕がなかった。

工藤知恵が真後ろにいるせいだ。


「工藤、上出来だよ。そのまま頑張れ」

誰かが後ろを走る工藤知恵を応援している。


聞いたことがない声だ。もしかしたら城華大付属の4区を走る西真奈美さんかもしれない。


2キロを通過し、時計を確認する。

この1キロは3分5秒。


私のペースは決して遅くない。

むしろ、ペースが早過ぎて若干きついくらいなのだが。


速いペースで走るきつさと、工藤知恵にぴったりと付かれると言う予想外の展開に心が落ち着かない。


ふと、頭の中でいつだったか山崎藍子が言っていた言葉が蘇る。

工藤知恵は練習中でも藍子にぴったりと付いて来ると言っていた。


言われてみれば、総体と選手権、工藤知恵はどちらも3000mに出場していたが、自分でレースを作るというよりは、ひたすら付いて行くレースをしている。


そして、そのどちらも後半で力尽きたのか、先頭集団から離れていた。


つまり、今のこの状況も別段不思議なことでも無く、もしかしたら後半で工藤知恵が失速する可能性もあると言うことなのだろうか。


一瞬、ワザとペースを緩めて工藤知恵に先頭を引っ張らせたらどうなるのだろうと思った。


県総体で私が千鶴にしたことをもう一度やってみようと思ったのだ。


すっと私がペースを緩める。そ

れに合わせて工藤知恵もペースを落とし、私の後ろに付いたまま走る。


ペースを落とせば先頭に出てくれると思ったのだが、どうやら相手は徹底的に後ろについて粘る作戦のようだ。


それだったら仕方ない。

こっちも振り払うのに全力を使うのみだ。


元のペースに戻した時にあることに気付く。

工藤知恵も同じようにペースを上げ、ぴったりと付いて来るのだが、先ほどよりも息遣いが荒くなった。


私がペースを変えたせいでリズムが崩れたのだろうか。


試しにもう一度ペースを緩めて少し走り、またペースを元に戻す。

ペースを戻した時には、先ほど以上に工藤知恵の息遣いが荒くなった。


きっと、私のペースは工藤知恵にとってかなり速いペースだったのだろう。

もしかしたら無理を承知でついて来ていたのかもしれない。


その上、私がペースを上下させ揺さぶったので、リズムが崩れたようだ。


元に戻したペースで200m走り、工藤知恵の呼吸が戻るようなら、もう一度揺さぶってみようと考えたが、その必要はなかった。


偶然の結果ではあるが、さっきの揺さぶりで工藤知恵は耐えきれなくなったらしく、100m走ったところで足音が少しずつ遠のき始めた。


でも、これで安心してはいけない。


私のするべきことは、先頭に立ち1秒でも城華大付属との差を広げることだ。

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