episode14
例えば、二番目のお兄様にはお父様にも内緒の子どもがいる。
例えば、七番目のお姉様は貢いでる男がいる。
例えば、十番目のお姉様はお父様のお金をこっそり盗んで使ってる。
出てくる、出てくるで兄姉を揺すぶるのに困ることはない。
笑っちゃうくらい、この家は悪事に満ちていた。
「ねぇ、じゃあ八番目のお姉様のことは何か知ってる?」
「えーと、あの方は……」
スワンの手を握りながら尋ねれば、スワンは簡単に口を開く。
本当に、この家のスワンの可愛がりぶりには目を見張るものがあった。
私が持つこれらの情報は全てスワンから教えてもらったものだ。
なぜ、そんなことを知ってるのかとスワンに尋ねると、スワンは話されたからですよと悪気なく答える。
人は、何事も共有することを望む生き物だから。
その共有する相手にスワンは相応しかったのであろうか。
まぁ、兄姉たちもこんな形で利用されるなんて想像もしてなかっただろうけどね。
「ふふ、次は誰にしようかしら」
スワンから仕入れた情報を元に、兄姉を揺すり、落とす。
最近はそれが定番だが、とても楽しい。
今まで私が下だったのが嘘のよう。
まるで女王様にでもなった気分だ。
「楽しそうですね、ミーシャ様」
そんな私を見て、スワンが笑う。
「ミーシャ様が楽しそうだと、俺も嬉しいです」
スワンは私に利用されているとも知らないでこんなことばかり言う。
それを怖いとも思うが……それ以上にスワンの存在は大きい。
だから、多少の歪みには目を瞑ろう。
「それはよかった」
私が微笑めば、スワンは幸せそうにその身を寄せてきた。
そんなスワンを受け止めながら、少し考える。
すべて思い通り。全て上手くいっている。
それなのに、心に引っかかりを覚えるのはどうしてだろう。
私の心にも、まだ家族を思う気持ちがあるのだろうか。
それとも……。
「そういえばミーシャ様、今度のパーティーには参加されるんですか?」
「パーティー?」
そんな予定あっただろうか?
「三番目の姉君が主催される、パーティーですよ」
「あぁ、お姉様のか」
三番目のお姉様。
スワンを可愛がる筆頭だった彼女とは実はまだ再会していない。
というのも、彼女はほとんど家の帰ってこないのだ。
遊んでいるとも聞くし、仕事をしているとも聞くし、その辺は曖昧だが社交的な場には顔を出したりとよく分からない人である。
だがあの人にも、いろいろとお返ししなくてはいけないことがある。
私は口元を手で隠しながら、笑みを作った。
「そうだね、せっかくだし参加しようかな」
そういうとスワンは嬉しそうに、笑顔を見せた。
「なら、俺が贈ったドレスをぜひ着て下さい! まだ、一度も着てないでしょう?」
確かにクローゼットの中には先日スワンから贈られたピンク色のドレスが入ってる。
あまり着たいとも思わないが……スワンのことは色々と利用しているしご褒美をあげるのも悪くないか。
「じゃあ、次のパーティーは着ていくね」
はち切れんばかりの笑顔を見せるスワンの髪を撫でる。
「嬉しいです。ミーシャ様ならきっと似合いますよ」
「ありがとう」
きっと、私が着ればドレスに顔が負けることだろう。
目に見えて分かる。
「ねぇ、それよりもスワン。お姉様のパーティーの警備って誰がやるかな?」
「俺達の部隊だと思いますよ。血縁関係がありますし」
そうだろうな。
お父様のパーティーも基本的にお兄様の部隊が採用されることが多いし。
そうと分かれば話は早い。
「スワン、明日からはちゃんとお勤め頑張って」
「はい?」
「ちょっと調べてほしいことがあるの」
私はスワンにばれないように、私はその金髪を握りつぶす。
「パーティーの出席者の一覧。あと出される食事や飲み物の店やルート。お願いできる?」
次の狙いは三番目のお姉様に、決定だ。