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人を笑わせるのってどうして難しいのだろう?

怪しげな薬のおかげであっと言う間に骨折が直ってしまった俺は、購入済みということで無理やり押し付けられた松葉杖1セットを抱えながら病院を出た。

そこには……。

異色ラブコメ能力バトル第二弾です。

 午後三時頃、入院した翌日に退院させられた俺が病院を出ると、ツインテール黒髪の美少女が自転車の荷台の上に立っていた。腕組みをしたセーラー服の彼女はバランスを取るようにサドルの上に左足を置いている。

「遅かったわね一条響、言った通りに退院……」

 係わるな。

 地縛霊は病院から離れることができないはず。名前を憶えられていても、距離さえ取れば問題ない。きっと背後霊様が護ってくださる。俺は病院から無理やり引き取らされた松葉杖を抱えながら無視を決め込む。

「ちょっと。私のことちゃんと見なさいよ」

 怒りを含んだ金切り声が俺の背中に叩きつけられる。そうか。そこまで言うならば仕方がない。俺は自転車の下にしゃがみこんで見上げる。

「はぁ、やっぱり真っ黒だ。地縛霊に白は似合わないと……」

 美少女が飛んできた。

 いや、それは正しくない。

 膝が降ってきた。地球の重力を利用した攻撃。ああ、MAXでのキッドの膝蹴り一閃を髣髴させる凄惨な膝。避けること敵わず、そのまま顔面に直撃。黄色く染まる世界で時間が遅くなるのを体験しながら後ろに倒れこむ。遅れて数秒、アスファルトと後頭部が衝突し、金属バットで殴られたかのような衝撃が俺を襲う。理由もなく『踊るゾンビ君』の最終回を思い出しながら途絶した。


『右の頬を打たれたら、左の頬を向けなさい』それって、無抵抗主義者っぽい話に聞こえるけど、実は違うんだぜ。良く考えてみろよ。右の頬を打たれるってことは、左手でビンタしてきたってことだろ。俺もずっとそう思っていたけどさ、どうやら当時のユダヤ人社会は、右手の甲で右頬を叩くってのが侮辱する行為だったらしいんだ。要するに、俺を叩くのなら、右掌で叩いて見せろ。俺は侮蔑される存在じゃないぜ。って自分の尊厳を見せつけるような行為だったらしいんだ。な、面白いだろ。聖書の解釈って当たり前だけど一つじゃないんだぜ。


 懐かしい牧師の言葉が聞こえてきた。リアルに頬に痛みを感じる。とてつもなく……って、リアルに頬を叩かれている?

 目を覚ましたら、往復ビンタが飛んできた。どういうこと? 現在の状況認識を行おうと頭をフル回転させる。

「良かった意識を取り戻して。分かっているの? このどんな怪我でも回復できる薬は死んだら効果がないんだからね」

 目の前に美少女がいた。ちなみに、パンツの色は黒だ。

「一体、俺に何が?」

「超絶美少女のスカートの中を覗き込む変態がいたから成敗したのよ」

 アスファルトに仰臥していた俺は上半身を起こす。

 理屈は良く分からないが、頬がちょっと痛いだけで体はピンピンしている。他には後頭部がちょっと砂利っぽいのが気になるくらい。

「響。気をつけないと。人間は死んだら終わりなんだから」

「ってゆーか。俺の記憶の空白の間に何が起こった? もしかして、殺そうとしたのか地縛霊め。くそっ、聖水さえ持っていればお前なんかエクソシストしてやるのに」

「あのさ響。私は地縛霊じゃないから。それに、私が昨晩飲ませた、どんな怪我でもたちどころに治す凄い薬、略してどん薬の感謝をしないと」

 さすが地縛霊。言っている意味が理解できない。

 俺は松葉杖を拾ってから立ち上がる。

 人は顔じゃなくて中身だ。

 常日頃からそう考えている俺は、いくら美少女といえどもこういうぶっ飛んだ地縛霊に近づきたくない。だから、逃げるように立ち去ろうとした。これ以上、魂を吸い取られたら成仏してしまうから。


「待て、待ちなさいってば。一条響」

 俺が足早に歩き出すとついてくる。

 くそっ、この地縛霊かなりの行動範囲がありやがる。あっ、もしかして地縛霊ではなく、浮遊霊か? 俺は走り出す。下校途中の黄色い帽子を被っている小学生を追い越しながら荒い呼吸を繰り返す。松葉杖が重い。あの病院め、無理やりこんな物を押しつけやがって。文句を頭の中で繰り返しながら疾走していると、突如背中を押された。バランスを崩して転びそうになるのを松葉杖でバランスを取る(ありがとう松葉杖。ちょっとは役に立った)。

 颯爽と俺の横を通り過ぎた自転車は、ブレーキ音を立てる。と同時に美少女は体を捻り、右足を地面についてつむじ風のようなスピンターンをした。

 

「いい加減にしないと容赦しないぜ」

 さすがに切れた。完璧に切れた。どうしてここまでやられなきゃいけないんだ。そもそも、俺は被害者だ。犠牲者だ。謝罪を要求する立場だ(俺を撥ねたのはバイクだが、側溝に落とした自転車にも責任があるはず)。それなのにこの扱い。許されないだろ。常識的に考えて。

「そんなことより人の話を聞きなさい」

 彼女は自転車のスタンドを立ててからゆっくりと歩いてくる。

 まさか、自信があるのか?

 俺は松葉杖を構える。鼻水垂らしてそうな小学生が胡散臭そうにこちらを見ている。が、そんなことは気にしない。

「エロエロアザラシ エロエロザーメラク エロエロコケルノレス エロエロアラビックリ」

 まず、呪文にて魔力を増幅させる。その後に、聖水にて浄化させる。教科書通りではないし、プロテスタントだからカソリックのエクソシスムとも異なる。俺が説教してもらっていたのは異端中の異端の牧師。実用性重視タイプだ。最強の威力を発揮するはず。

 だがしかし……しまった。ある重要なアイテムが無い。

「あのさ」

「ようやく話を聞く気になったの?」

「いや、聖水を用意してもらえないかな? 今すぐ」

 眉を吊り上げた彼女がゆっくりと近づいてきたと思いきや、突如、俺は腹部に凄まじいボディーブローを叩きこまれた。あまりの痛みに声も出せずに体を曲げる。

 熱い思いがこみ上げてくる。

 ああっ。青春ってこんなに酸っぱいものだったっけ?

 楽になってしまえっていう悪魔の声と、お前はまだ頑張れるんだという天使の声が交錯しながら痛みと吐き気を堪える。

「昨日から無茶苦茶過ぎ。言っていいことと悪いことがあるって解らない?」

 答えられずに負け犬の目で彼女を見上げると、彼女はふぅっと溜息をつく。

 とても情けない気分だ。

 それでも、天使が勝利し俺の体は徐々に回復していく。両手を広げて大きく息を吸うとどうにか声は出せそうだ。

「あのさ。普通、私ほどの美少女が声をかけてきて、しかも知らないはずの名前を呼んだりしたら、餌付けされた野良犬のようにホイホイついてくるものじゃない?」

「いや、不器用な漢っすから、俺」

「……」

「ほら、地縛霊と会話すると魂が霊界に引き込まれるって言うし」

「お願いだから、私のことは人間と認めて、私の拳が真っ赤に燃えて、幸せ掴めと轟き叫ぶ前に」

 彼女は右手の拳を握り締めながら自分の顔に近づける。

 くうっ、そんな脅しに負けてたまるか。三秒間、強い意志を示し、

「とりあえず、あなたを人間と認めます」

 と宣言する。

 美少女は青い空を見上げてツインテールを揺らすと、梅干しを二、三個同時に口に放り込んだとでも言いたげな酸っぱい顔をする。

「すっごい複雑な気分」

「それじゃ」

 松葉杖を抱え直し歩き出そうとしたら、肩を掴まれた。

「自己紹介は?」

「どうして? 俺の名前、知ってるじゃん。必要ないだろ?」

「確認が必要だから」

 個人情報保護の時代に勘弁してもらいたい。そう思いながらも真っ赤に燃える拳と争う気にもなれず正直に、

「一条響。近くの高校一年一組出席番号一番。頭脳明晰、容姿端麗、身長百六十五センチメートル、体重五十五キログラム、趣味は呪文を唱えること。現在、文芸部部員ってことになっている。で、あなた様のお名前は?」

 と告げると、頼んでもいないのに美少女も自己紹介を始める。

「一部、嘘、誇張があるけど見逃してあげる。私は、織田真里菜。君と同じ高校の一年三組で、あんたのパートナー」

「パートナー」

「そう。あんたはこれから高校生バトルに参加するの。というより、参加しちゃったの。昨日、私に首輪をつけられたときからね」

「はぁ?」

 何言っているんだ。こいつ。やっぱりおかしいんじゃないか。地縛霊でも浮遊霊でもないなら、悪魔憑きかもしれない。呆れた目で見ると、逆に睨みつけられる。

「今のところ透明だけど、首のところに金属質の首輪があるのがわからない? 手で触ってみなって」

 言われた通り触ってみると、ヒンヤリした金属質の物体がある。つか、動く度に肩や首に触れるから気づいていたけどね。

「説明しようかと思ったけど止めた。もうすぐ、相手が来る時間だから、闘えば分かるでしょ」

「俺、非暴力主義だから、喧嘩とかしないぜ」

「その首輪とられてもいいなら、いいんじゃない?」

「その前に、この首輪取れよ。結構肩がこるんだぜ」

「バトル参加者に首切ってもらえればいいんじゃない」

「ふざけんな。そのバトルってのをやる気もないし。首を取られるつもりもない」

「そう。でも頑張ってね。相手が到着したようだから」

 気がついたら、辺りは静寂に包まれていた。

 俺は違和感を覚えて周囲を見回す。

 すると、そこらじゅうを歩いていた小学生の動きが止まっている。いや、それだけじゃない。車も自転車も空を飛んでいる鳥でさえも時間が停止したかのように動いていない。


「なんだよ。これ」

「魔空空間よ。バトルのための特殊空間ね。地軸を操作して生み出された一種のブラックホールってとこ」

 説明をしながら、真里菜は俺の後ろを見ている。

 振り向くとブレザーを着た眼鏡の少年がいた。背は俺より一回り小さい。高校生と言うより中学生に見える。ただ、目つきが悪い。俺にガンつけてきているようだ。ストレスが溜まっている俺は、イラッとして、

「坊や。何か用か?」

 と挑発する。すると、少年は、細い目を二倍くらいまで開き、大声を上げる。

「お前、今、死亡フラグ立ったぞ。今からバトルの開始を宣言する」

「はぁ? 何言っちゃってんの?」

「響、バトル開始宣言後の三十秒後から戦闘可能よ。気をつけて。相手の能力は、ロケットパンチみたい」

「ロケットパンチ?」

「そうだ。うすのろが」

 少年は両手を前倣えのように伸ばした。と、次の瞬間に両腕が野球のボールのように飛んでくる。もとい。この場合は、バットが飛んできたと言うほうが適切かもしれない。

 反射的に、お辞儀をするように頭を下げる。すると、両腕はそのまま頭上を通過したのだろう。何処かへ行ってしまった。かすらせもせずに躱すことが出来て、俺は、ふうっと溜息をつく。

「何をやっているの。戻ってくるわよ」

 真里菜の声に後ろを向くと確かに両腕はUターンして、再び俺に襲い掛かろうとしている。

「はっはっはっ。俺様のロケットパンチから逃げられるものか」

 哄笑している少年の声に再びイラッとする。

 スゲームカつく。

 俺は一個の松葉杖を適当に放り、もう一個の松葉杖の下の部分を持ってイチローのように構える。脚を小さく上げてタイミングを計り、思いっきり振ると、飛んできた両腕にまとめてヒットした。

 まぁ、松葉杖の持つ部分はバットよりはるかに面積があるからな。当たって当然か。

 詰まらんものを打ってしまった。そう思った瞬間に叫び声がする。

「うぎゃーーーーー!」

 振り返ると、少年は両膝をついていた。肘からない部分、あるはずの腕を見ながら涙を流している。

「何やっているんだ? あいつ」

 俺は少し離れている真里菜にちょっと大きめの声で話しかける。

「手が飛ぶって言っても生身なのよ。松葉杖で叩かれたのが、痛かったんでしょ。多分。何でもいいからこのチャンスを生かさないと」


 真里菜は拳で叩く真似をするが、あれほど痛がっている人間を殴ったりするのは躊躇われる。

 俺は成り行きを見ていると、ゆっくりと両腕が少年の元に近づいていき、くっついた。凄い。鉄人28号超合金よりリアルだ。

 ぽけーっと口を半開きにしたアホ顔で見ていると、少年は、ブレザーのポケットから小さな瓶を取り出す。ファイト一発! ってな勢いで一気に嚥下する。中身を全て飲んだのか、瓶を投げ捨てて中指を立てる(あら、お下品)。

「お前、絶対にただじゃすまさないぜ。生き地獄を覚悟しやがれ」

「響。さっさとやっちゃわないから、どん薬を飲んで復活しちゃったじゃない」

「今更そんなこと言われても……」

「お前、どっち向いているんだ」


 少年は先ほどと同じように腕を伸ばす。そして、腕が放たれる。

 あーあ、学習していない少年だ。こんな腕、ちっとも怖くない。また、軽々と叩き落としてやる。完璧なタイミングで松葉杖を振った。プロ野球選手だってびっくりするような正確無比なスイングだったはず。

 しかし、驚愕したのは俺の方だった。

 まさか、ロケットパンチが急停止するとは、大リーグボールだって驚きだ。

 空振りした松葉杖をあざ笑うかのようにくねくねと動いた両腕に、俺は顔を二回ほど殴られてから首を掴まれる。

「このまま、絞め落としてやる」

 俺は必死に手を引き剥がそうとする。

「真里菜。何とかしろ」

「バトルを直接手伝うのは禁止だから無理。つか、オブザーバーである私はバトル中の人間に触れることができない。そんなことより、首輪の能力を使いなさい」

「俺もロケットパンチを打てるのか?」

「違う。首輪は人によって使用できる能力が異なる。とりあえず、自分自身の恥ずかしいことを大きな声で叫んで。そうすれば、響の首輪の能力で相手を倒すことが出来る……。かも」


 出来るかも、って何だ。そのかもってのは。

 文句を言いたくなったが、そんな余裕はない。あの少年、チビの癖に力は強い。このままでは、首を絞められて殺されるのは時間の問題だ。ならば、当たって砕けろだ。

「俺は童貞だ」

 思いっきり叫んだ。しかし、何事も起こらない。

「俺も童貞だぜ。別に、高校生だし女の子とは純粋に付き合うべきだと思うぜ」

 くそっ。少年は余裕の表情だ。

「何言っているの響。そんな、当たり前で世間一般から見て常識で理解できることを言っても無意味よ。もっと、自分の隠したいような恥ずかしいことを言わないと」

 真里菜め、簡単に言ってくれる。だが、まじやばい。もう力負けしてしている。この状態ですら一分も持たないだろう。ならば、最後の勝負だ。

「俺は真性包茎だ!」

 その瞬間、時間が止まったような気がした。

 どうにでもなれ、と思って首を護っていた手を離し攻撃を仕掛けようとした。

 しかし、首は絞められない。それだけでない。何時の間にか、両手は無気力に地面に落ちている。

 俺は不思議に感じて少年を見た。

 少年は猫が背中を痒がっているときのように道路を転がっている。そこまで面白かったのか? とこちらが詰問したくなるくらい爆笑している。ヒーヒー擦れるような呼吸で、足でバタバタと動かしていると思いきや、そのまま動かなくなった。

 まるで、殺虫剤でゴキブリを噴射殺した時の光景だ。

 何事? 何が起こったか理解できない俺が少年に近づこうとすると、ハンカチで口元を押さえている真里菜が気がついたら横にいてゲラゲラと嗤っている。

「もしかして、死んじゃった?」

「笑うだけで死ぬわけないわよ。早く、あいつの首輪を取りなさい。気絶中のバトル参加者の首輪を外すことが勝利条件だから」

 俺は小走りで少年の下に行き首輪を外そうと前かがみになって手を伸ばした。思いっきり引っ張ると、首輪は何事もなかったかのように俺の手の中に移動する。一体どういう原理になっているのだろうか。

「それで、これどうするんだよ?」

 まだ笑っている真里菜に首輪を突きつける。

「あのさ、真性包茎は病気だから恥ずかしいことじゃないんだよ。保健も適用範囲だし。大きさってのは人それぞれじゃない」

「真里菜だって笑っていたくせに」

「気のせい。首輪の能力のせい。忘れなさい。それより、その首輪をつければロケットパンチを使えるようになるけど、どうする?」

「いや、さっきのやつを見て思ったけど、手が飛ぶだけならあんまり嬉しくないな」

「なら、首輪にお願いをすれば? そうすれば能力アップが可能だけど。そっちにする?」

「能力アップ?」

「頭が良くなるとか、足を早くするとか、力が強くなるとか。後は、身長を伸ばしたりとかの肉体的な変更も可能。でも、能力アップしたからって、偏差値が十も二十も上昇する賢くなるわけでもないし、身長も数センチメートルくらいしか伸びないけど。でも、響は体力……」

「それじゃあ、包茎を直してください」

 俺が首輪にお願いをすると、首輪は二、三回光った後に消えた。変化した感じはないが、気分的にはすっきりしている。世界が一層明るくなった気がする。

 午後三時の青空よ。ありがとう。下校途中の小学生たちよ。ありがとう。

「人の話を最後まで聞かないで何を勝手なことやっているのよ」

 一人で感動に浸っていたら、真里菜にお笑い芸人のように叩かれた。

「何で叩くんだよ」

 俺は怒りを顕わにして文句を言うと、真里菜は鬼のような形相で俺の文句を受け止める。

「殴るのは当たり前。バトル勝利のご褒美としてのお願いだけど、次のバトルに勝ち抜くために必要なパワーアップなんだから。響は体力が他の人より少ないから、そこを増強しないと勝ち目がないんだって」

 真里菜はスカートのポケットからスマホらしき物を取り出す。

「今から、響のパラメータを読み上げるから聞きなさい」


 体力:33

 腕力:37

 敏捷:54

 知識:53

 知恵:66

 魅力:57

 運 :29

 能力:人を笑わせる

 条件:恥ずかしいことを言う


 真里菜は読み上げた後に、スマホらしき物を俺に見せる。携帯端末とかその手の類か。

「これって、点数? 運、29って何だよ。低すぎ、ははは」

「笑ってる場合じゃないって。点数じゃなくて偏差値だからこれ。運は変動するから無視していいけど、体力と腕力が低すぎる。これからどうやって闘うつもり?」

「別に闘う気はないけど」

「言うこと聞かない皮被りだなあ」

「五月蝿いな。確かにお前は可愛いけど、ひんぬーだろーが」

 俺は真里菜の胸を指さそうとした。

 ホント、それだけのことだ。

 絶対にいやらしい気持ちなんてなかった。

 なのに、不運なことに俺の指は真里菜の小さい胸に触れていた。


「ひーびーきー」


 真里菜の震える声に俺は手を引っ込める。

 しかし、遅かった。致命的に遅かったみたいだ。


 俺は彼女の右ストレートを顔面に感じながら意識を失った。


 続く。

 2012/07/12


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