プロローグ2
約一年後――
博士は、あらゆる手を尽くしました。
しかし、ロボットが動くことは一度もありませんでした。
そんなある日。
空が割れるような嵐が、世界を包み込みました。
ピカッ――!
ゴロゴロゴロ……!
激しい雨と風が、ボロボロの研究所を叩きつけます。
「い、いかんいかん……!」
博士は慌てて外へ飛び出しました。
穴だらけの屋根に布をかけるため、よろよろと屋根へ登ります。
そのとき――
ドカーンッ!!
雷が、研究所へ直撃しました。
閃光。
轟音。
そして――沈黙。
雷に打たれた博士の体は――
崩れかけた屋根を突き破り、
そのまま研究所の中へと落ちていきました。
ドサリ、と鈍い音が響きます。
外では、激しい雨と雷鳴が続いていました。
けれど、研究所の中だけは――
不思議なほど静かでした。
「……あぁ……」
かすれる声で、博士は呟きます。
「一度でいい……
動くところを……見たかったのぅ……」
震える手を、ゆっくりと伸ばします。
「お願いじゃ……
ワシの最高傑作……」
指先は、ロボットには届きません。
「……動いて、おくれ……」
その言葉を最後に――
博士の意識は、静かに途切れました。
――沈黙。
雨音だけが、遠くで響いています。
……。
…………。
そのとき。
ギ……。
ほんのわずかな音が、鳴りました。
ギギギ……ッ。
ギギギ……ッ。
今まで一度も動かなかったロボットの指が、
わずかに動きます。
ゆっくりと、ゆっくりと――
ロボットは立ち上がりました。
ぎこちない足取りで、博士のもとへ歩み寄ります。
そして。
倒れた博士のそばに立ち、
降り注ぐ雨を、その小さな体で遮りました。
まるで――
騎士のように。
カチ……。
やがて、音が止まります。
ロボットは、そのまま動かなくなりました。
雨だけが、静かに降り続いていました。




