プロローグ1
むかし、むかし。
あるところに――
とても残念で、とても賢い、
自称天才博士がいました。
博士はいつも変人扱いされ、周りの人たちからは嫌われていました。
けれど博士はそんなことなど気にもせず、来る日も来る日も研究ばかりしていました。
「いつか、とんでもない発明をしてやるぞい!」
そう言って、何十年ものあいだ研究を続けていたのです。
そして、ある日のこと。
ついに博士は完成させました。
炎の中でも燃えず、
深い海に沈めても壊れず、
氷のように冷たい場所でも凍りつかない――
そんな、最強のロボットを。
……ただし。
ゼンマイ式でした。
博士は胸を張りながら、ロボットの背中にある大きなネジを見つめました。
「ふはははは! ついに完成じゃ!
我が最強のロボットよ!」
博士はゼンマイを巻きました。
カチカチカチカチ。
カチカチカチカチ。
そして大きく腕を振り上げ、叫びます。
「さあっ! 動き出せぇぇぇ!」
ロボット
「…………」
動きません。
博士
「……さあっ!」
ロボット
「…………」
博士
「さあっ!! さあ! さあ! さあっ!!」
ロボット
「…………」
博士はだんだん顔が青くなってきました。
「え……えぇ〜〜〜〜!?
う、ウソじゃろ!?」
額に汗をにじませながら、ロボットをぺたぺた叩きます。
「おかしいのぅ……
設計は完璧なはずなんじゃが……」
博士はしょんぼりしながら、ロボットを眺めていました。
――その様子を。
天井の梁の上から、
一匹の小さな妖精がニヤニヤしながら見ていました。
この妖精、とてもイタズラ好きだったのです。
博士が長い年月をかけて作ったこのロボットに、
ほんの少しだけ――
小さじ一杯ほどの魔法を、こっそりとかけていました。
それは、
「願われないと動かない魔法」
です。
妖精はクスクス笑いました。
「さあて、このロボット。
いったい、誰に願われるのかな?」
そしてこのロボットが、
何百年もの時を越えて――
「ネジを巻け」
と、誰かに頼むことになるのは、
まだ、もう少し先のお話。




