表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

死の淵から戦場へ

この作品を手に取っていただき、ありがとうございます。


この作品は、「もう一度やり直せたら」という想いから生まれました。


鬱で絶望していた主人公が、異世界で仲間と出会い、少しずつ生きる意味を取り戻していく――


そんな再生の物語を描いています。


拙い文章ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

「17、16、あと15秒で黒の魔素が30まで溜まるぞ!」


「恐らくルーダの後方にトラップ配置だ! 気を付けろ!」


頭の奥に、直接声が流れ込んできた。

耳で聞いた感覚はない。それなのに、意味だけがはっきりと理解できる。


――何だ、これは。


眩しさに慣れきらない目をゆっくりと開く。

視界に飛び込んできたのは、見知らぬ森と、そこに立つ複数の人影だった。

剣や杖を構え、身体には金属製の鎧や革鎧。

まるで映画か、ゲームのワンシーンのような光景。

理解が追いつく前に、再び頭の中で声が弾けた。


「ルーダ! 後方のトラップ回避と、相手の進路を阻むため右に移動!」


切迫した指示。

誰かがこの戦場全体を見渡し、判断を下している。


「待ってくれ! なぜか右後方に人が立っている。確認させてくれ」


困惑した声が返る。


「何を言ってる! 秒単位の戦闘をしているんだぞ!」

「戦士があと5秒で魔素値20になります!」


数字の意味は分からない。

だが、危険な状況であることだけは嫌というほど伝わってくる。


次の瞬間――轟音。

一人の男が後方へ吹き飛ばされた。

まるで見えない何かに殴り飛ばされたかのように、身体が宙を舞い、地面へ叩きつけられる。

男が倒れた地点で、淡く光る魔法陣が展開された。


「がしっ」


不気味な音と同時に、地面から蔦のようなものが噴き出す。

それは意思を持っているかのように蠢き、一瞬で男の腕、胴、脚へと絡みついた。


「馬鹿野郎! 何やってる!」

「ダメ! 抜けられる!」

「――撤退だ。ルーダ、後で覚えてろ……」


悔しさと苛立ちを滲ませた声を最後に、周囲の緊張が一気に霧散した。

その直後――視界が歪む。

風景が塗り替えられるように、世界そのものが裏返った。


――待て、待て待て。

頭が追いつかない。

つい数秒前まで、俺は夜の山の麓にいたはずだ。

春から初夏へと移り変わる頃合い。

人目につかない場所を選び、獣道を辿り、ようやく辿り着いた静かな山。

これから森に入り、すべてを終わらせるはずだった。

手には、確かに紐を握っていた。

それだけは、はっきりと覚えている。


なのに今は真昼だ。

空は高く、木々は見覚えのない形で枝を伸ばしている。

森であることは確かだが、あの山とはまるで違う。

俺は立ち尽くしたまま、周囲を見回した。


一体、何が起こっている……?

そう考えた瞬間、目の前に人影が現れた。


「おい、君は誰だ。ここで何をしている」


歳は高校生くらいだろうか。

背は俺より若干低く、黒髪で端整な顔立ちをした少年だった。

何か答えようとしたが、まだ頭が混乱していてうまく言葉が出てこない。


「とりあえず、ここにいたら殺される。急いで離脱しないといけない。俺たちと一緒に来い」


少年の緊迫した声を聞き、自分が危険な状況にあることを嫌でも理解した。

不思議なことに、つい先ほどまで死のうとしていたはずの俺が、今は必死に生きようとしている。

理屈ではない。

本能が叫んでいた。

――ここで死んではいけない、と。

俺は頷き、少年の後を追った。


数分後。

森の奥深くで足を止めた少年が、こちらを振り返る。


「……それで、君は一体何者なんだ?」


その問いに、俺は答えられなかった。

なぜここにいるのか。

何も分からない。

ただ一つだけ確かなのは――

俺の知っている世界は、もうどこにもないということだけだった。


少年は俺の沈黙を見て、小さくため息をついた。


「……話は後だ。まずは王都に戻ろう。そこで詳しく聞かせてもらう」


王都。

聞き慣れない単語が、妙にリアルに響いた。


第一話を読んでいただきありがとうございます。

次話では王都へ。

引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ