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遣らずの雨  作者: 暦海


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2/9

重荷

 ですが、当初は何ら苦痛などありませんでした。この能力(ちから)が数多の方の一助にでもなったのであれば、私としてはありがたく思うこそすれ疎ましく思う理由などあるはずもないのですから。



 ところが、それから数年――その評判が里を、町を越え伝播していったようで、もはや応対しきれないほどに数多の方が私の下を訪れるようになりました。当初抱いていた数多の方のお役に立てる喜びは、いつしか耐え難い重荷となり私の心にずっしりとのしかかっていきました。


 そして、重荷(それ)は私だけでなく両親にも。そして、いつしか耐えきれなくなったお二人はある朝にて出立――どうか戻って来てと心から強く願いつつも、格子越しに遠ざかるその背中をただただ見送ることしか出来なくて。




 それからほどなく、私は生まれ育った地を離れることに。以前、例の能力(ちから)にて雨を降らせたことで私に恩を感じてくださっている一組のご家族が、独りになった私のため例の評判の届かない地――今やもう、ほとんど人も住んでいないこの小さな村に住居を用意してくださったためです。そして、更には私が生活には困らぬよう定期的に十分な食料を送ってくださるという心深き施しまでも……本当に、ご恩を申し上げるべきは私の方で。


 そのような事情にて、一人になって早五年――本当にお陰さまで、何一つとして支障なく生きてきました。そして、きっと今後もずっと――



 ――コンコン。



 すると、ふと微かに扉を叩く音が。何方(どなた)かはもちろん不明ですが、この雨ですしその目的なら大方察せられます。ともあれ、すぐに参りますと告げ玄関の方へ。そして、徐に扉を開くと――


 

「――突然の来訪、申し訳ありません。私は、翠明(すいめい)と申します。可能であれば、一晩泊めていただきたく存じます」



 そう、藁の傘を片手に柔らかな微笑で口になさる男性の姿があって。






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