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遣らずの雨  作者: 暦海


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奇怪な能力

「…………雨、ですね……」



 空が疎らに灰色を帯びる、ある夕暮れのこと。

 木組みの格子から、ぼんやりと外を眺め呟く私。視界には、ポツリポツリと落ちる雫。そして、それは次第に量を、速度を増し、ついには土砂降りに……まあ、これは恐らく……いえ、間違いなく自然の現象でしょうけれど。今、私にとって降雨(それ)を願う理由など何処にもないはずなので。


 さて、何とも不可解なことを申していると自認はしていますが、これは言葉の通り。心から強く願いさえすれば、自身の意思にて雨を降らせる――どうやら、私にはそのような奇怪な能力(ちから)が備わっているようでして。




 最初は、七年ほど前――間もなく、10歳を迎える頃でした。その年、偶然訪れた里の農家にて甚く深刻……いえ、ほとんど鬱に近い表情をなさっているご家族の姿を目にしました。お話を聞くに、例年にない日照り続きにて深刻な不作に陥っているそうで。見ず知らずの方々とはいえ、そのような悲痛なお姿に私までも心が痛み、無駄と知りつつも一心に祈りました。……どうか、どうかと。



 すると、不思議なことが。なんと、それからほどなくポツリポツリと空から粒が……そして、ややあってその量は大いに増し瞬く間に田んぼは潤いを取り戻し――何とも衝撃の展開に、ご家族も私も唖然とするばかり。それでも、ややあって先ほどのご様子が一転、皆さん歓喜のお声を――ともあれ、私までもが心から歓喜の念を覚えたことを今でも鮮明に覚えています。



 ……ですが、流石に偶然でしょう。ほどなく雨が降る頃合いに、偶然にも私が祈りを込めただけ――よもや私の(もたら)した結果などと、そこまで思い上がっているつもりはありません。


 ですが、そのような現象(こと)はその後、一度や二度ではなく。明確な数こそ覚えてはいませんが、逆に申すと容易く数えられないほどには幾度も……少なくとも、全くの偶然で片付けられる度合いを優に越えていて。


 なので、烏滸(おこ)がましいとは思いつつも認めないわけにはいきませんでした。心から強く願うことで雨を降らせる――私には、そのような奇怪な能力(ちから)があるのだと。






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