初恋
0話、番外編
むかーし昔、俺にも小さい頃があった。
「ほんとに?」
ああ、もちろんだとも。お前と同じぐらい小さかったんだ。
俺が小さい頃、この辺りには湖があってな。そのほとりの小屋には魔女が住んでいたんだ。怪しい薬を使っているだの、猫を食べて魂を得るだの…とにかく恐ろしい噂がたくさん流れていた。親にはさんざんあそこに近づくなって言われたよ。ただ俺は悪ガキだったから、怖いもの見たさにその小屋を覗きに行ったんだ。
そしたら誰がいたと思う?その時の俺より数個上ぐらいの可憐な少女だったんだ。……そんな昔のこと、…って言ったって忘れられないよ、初恋なんだ。 その日は惚けて何もできず帰ったよ。だから次の日に会いに行って声をかけたんだ。ガキだったし洒落た口説き文句なんて知らなかったからさ、馬鹿正直に
「一目惚れしました」って言ったんだ。我ながら可愛いことを言った。その魔女も人に飢えてたようで、
「お付き合いはできないけど、クッキーはあるわよ。食べていったら?」って
精一杯おもてなししてくれたのがすごく嬉しかったし可愛いらしかった。
何年も魔女の元に通って俺は17になった。流れた時間は幸せとしか言い表せない、それなのに彼女の見た目は変わらないんだから不思議だったよ。
結論から言うと彼女は魔女で不老不死の呪いを受けていた。その呪いを誰かに肩代わりさせないと彼女は死ぬことができなかったんだ。だから………死にたい時に死ねないのは辛いことなんだ、まあ俺はまだ死にたくないけど。お前たちを残してまだまだ死ねないよ。そうだな、あと100年は働く!まだまだ働き盛りなんだ。
「その呪いを肩代わりしたからひいひい…おじいちゃんはここにいるの?」
「そうだぞ」
「なら…魔女がいてよかった…」
「そうだろ?いつかお前が魔女に会うことがあったら…俺の代わりにありがとうって言っておいてくれないか?俺はまだまだ会う予定がないんだ。」
「うん…分かった…」
幼い少女は父親には見えない傷だらけの青年に見守られながら目を閉じた。
くそ




