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両想い



 翌日、学校へ行く気になれなかった私は仮病で学校を休んで、その翌日学校へ行くとプチ騒ぎが起きてて目が点になる私。


「ねぇ! あんなイケメンうちの学校にいたっけ!?」

「いや、いなかったよね!?」

「あのイケメン何者!?」


 なんの騒ぎだろう? サプライズでアイドルでも来てんのかな? とか適当なことを考えながら、重い足取りで教室へ向かう。


「ヤバくない!? あれ、西宮君らしいよ!」

「はあ!? ……って、西宮って誰だっけ」

「ほら、いたじゃん! 陰キャの子! いつも陽キャ女子連れてた!」

「ええ!? あの陰キャがっ!?」


 とか騒いでいる女子達が私の前にいる。なんの話? そう思いつつも教室へ行くと人だかりができていた。


「あー、すみまーん。通してくださーい」


 私は人だかりを掻き分けて教室の中へ入って、ゆっくり顔を上げた。すると、私の視界に入ってきたのは──。


「未琴」


 ・・・いや、誰だオマエ。


「この前はごめん」


 ・・・うん、だから誰だオマエは。


「あの、誰ですか」

「え?」

「はい?」

「いや、僕だよ僕」

「ボクボク詐欺ですか?」

「はぁぁ、分かるでしょ普通。絢斗だよ」


 ── ん? ん? んん? んんん!?


「うえぇぇ!?」

「未琴、うるさい」

「あ、ごめん」


 私は慌てて自分の口を手で塞いだ。


 いやいや、待って待って。えっとぉ……私が最後に絢斗の全容を目にしたのはいつの頃だったかしら。多分、小学校低学年の頃が最後かな? その時は可愛らしい顔してたのよ。本当に羨ましいくらい可愛らしい顔をしてたのよ、うん。なのに、なぜか目を隠すようになって、年々陰キャを極めることになった絢斗。まあ私は、絢斗が可愛かろうが陰キャだろうが関係なかったけど。


 だって、絢斗自身のことが好きだったから。


 ── で、今私の目の前にいるのは、昔の面影なんて一切合切ない超絶イケメンの“西宮絢斗”。なにがどうなってこうなった?


「今日、一緒に帰りたいんだけどいいかな」

「ほえ? あ、う……うん」

「ありがとう」

「あ、どうも、こちらこそありがとう……?」


 それから騒ぎが落ち着く、なんてことはあるはずもなくあっという間に下校時間。絢斗は女子に囲まれて揉みクシャにされている。それを救ったのは私の親友達だった。


「こらこら~、これを誰のもんだと思ってんの~?」

「さっさと散りな~」

「このイケメンは未琴のだぞ~」 


 絢斗を囲っている女子達を蹴散らす勢いの詩織、美里、楓。マジで本当にありがとう。


「未琴ごめん。行こ」

「うん。詩織! 美里! 楓! ありがとうっ!!」

「「「グッドラック」」」


 ── 久しぶりに絢斗が私の隣にいる。それが当たり前だったのに、あの日から当たり前じゃなくなった。空回りして、自分で自分の大切な居場所を失くした。


 もう絢斗の隣は歩けないってヤケクソになって、絢斗のこと忘れたくて、ぽっかり空いたその穴を埋めたくって、でもそんなのは当然無理で、絢斗で空いた穴は絢斗でしか埋めれなくて──。


 私、やっぱり絢斗じゃなきゃ嫌。絢斗がいいの。絢斗じゃないと意味ないの。私の隣にいてほしいのは……絢斗だけ。


「絢斗、私っ」

「未琴、ごめんね。あの時、泣かせるつもりはなかったんだ。……僕さ、自分に自信が無くて逃げてばっかだった」

「……自信?」


 チラッと絢斗を見上げると、真っ直ぐ前を向いて歩いていた。


「未琴に『可愛いね』って言われてから、この顔が憎いほど嫌いになった」

「そっか……って、え……?」


 私は絢斗を二度見して、ポッカーンッと口を開けている。開いた口が塞がらないとはまさにコレ。


「未琴が悪いわけじゃないよ。僕の問題っていうか……ほら、未琴って昔『イケメンすきー!』とか騒いでたじゃん」


 ・・・えーっと、そうだったっけ……? ははっ、昔の記憶は曖昧ミーマイ。


「ハハハ……マジか私」

「マジ。だから嫌いになったんだよね、未琴の好みになれない自分の顔が」


「へ、へえ……」


 ・・・いや、ちょいと待たれよ。ん? え? 待って。それってどういう意味なんだい……?


「もう二度、こんな顔未琴に見せないって誓った」


 ひえっ!? 誓うな誓うなそんなこと!


「いや、そんなの勝手に誓わないでよ。びっくりするわ」

「ははっ」


 こらっ! 笑って誤魔化すなぁぁ!!


「未琴は昔から可愛くて、元気いっぱいで、友達も多くてさ。小さい頃からモテてたし、年々綺麗になっていく未琴を隣で見てたら僕なんかじゃ無理だって、僕なんかが釣り合うはずがないって諦めて、そう自分に言い聞かせてきた。本来、未琴に近付く男は全員もれなく蹴散らしたかったし、邪魔してやりたかったし、二度と未琴に話しかけようなんて気を起こさないに吊し上げっ」

「ちょ、ちょ、待って、待って……!!」

「ん? なに」


 なんか物騒な話になってるし、顔っ!! 怖いっ!! 漆黒の闇に包まれたような瞳をするのはヤメろ!!


「あの、ごめん。情報量が色々多すぎちゃって絢斗が何を言いたいのか、ちょっとよく分かんないんだけどぉ……?」

「ああ、ごめん。遠回しな言い方はもうやめるね……好き」

「そっか……ん? ハイ?」


 真っ直ぐ私の目を見て『すき』と言った絢斗。すき……すき……すき……? すき……やき……すき焼食べたいって? いや、スキーでもしに行くかって?


「未琴のことが好き。昔からずっと、物心ついた時から未琴のことが好きで好きでたまらなかった」


 私の頬を両手でそっと優しく包み込む絢斗。その手が少しだけ震えていた。


「絢斗」

「ごめん、緊張して。かっこ悪いね」


 かっこ悪くなんてない。私の中ではいつだって絢斗が一番かっこよかった。昔も、今も、そしてこれからも、それは絶対に揺るがない。


「絢斗がこの世界の中で一番かっこいいよ」

「未琴、それは眼科に行ったほうがいいかもしれない」

「もうっ! なんで今そういうこと言うの!?」

「ククッ、ごめんごめん」

「だいたい絢斗はっ……!?」


 絢斗の顔がおもむろに近付いてきて控えめに重なった唇。そして、少し離れてた絢斗。


「怒った未琴ってめちゃくちゃ可愛いって知ってた?」

「ふぇ?」


 相当マヌケな返事をした私にクスッと笑う絢斗は色っぽいというか、飢えた獣のようなギラギラした瞳で私の瞳の奥底を捉えて離さない。


「ねえ、未琴」

「は、はい……」

「すべて喰らい尽くしたくなるくらい君が愛おしい」

「うん……んん?」

「もう、我慢なんてしない」

「……え?」

「ごめん。もう逃がさないから」


 再びキスしてこようとする絢斗の顔面を咄嗟に鷲掴みした。


「なに。もう待てないんだけど」

「いやいや、ここ! 道端! ていうか、いきなりキスとかありえなくない!?」

「未琴は僕のこと好きじゃないの」


 ちょちょちょっ! その顔やめてって! 闇落ち寸前てきな顔しないでよ!

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