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最終章

 生きていれば、悲しいこと、辛いことは山のようにある。けれども、それ以上に喜びや楽しみもあるのだ。




 一ヶ月後、門脇のおばちゃんが店を訪ねてくれた。門脇のおばちゃんは店に来るなり大声で言った、「聞いて、聞いて! 私に孫がいたのよ!」と。


「え?」

「昨日、訪ねてくれたのよ!」

「誰がですか?」

「誰がって、麻耶さんがよ!」

「麻耶さんって誰?」

「誰って、息子の彼女だった人」

「もしかして、亡くなった息子さんの!?」

「そう。それでね、彼女は女の子を連れててね。その子が『おばあちゃん』って……」

そう言って、門脇のおばちゃんはわんわん泣き出した。僕は、カットしていた手を止め、ティッシュの箱を彼女に差出し、ロイヤルミルクティーを淹れた。僕も思わず、もらい泣きしていた。


 息子さんが生前付き合っていた麻耶さんという女性は、彼の忘れ形見である娘を祖父母に会わせるために、何年もかけて亡くなった彼の家を捜していたのだという。カフェで働いていた麻耶さんに一目ぼれした息子さんは、すぐに交際を申し込み、一年付き合ったが、自分の素性を摩耶さんに詳しく話していなかったのだそうである。「だから、こんなにも時間が掛かってしまって、本当にすみません」と摩耶さんは門脇さんに言ったそうである。


「その子がね、息子にそっくりなのよ。もう、私、びっくりするやら感激するやらで、涙で顔がぐちゃぐちゃ……」

「でも、本当に良かったですね。お孫さんに会えて」

「ええ、ええ」

「今度、僕にも会わせて下さいね」

「ええ、もちろん。私、息子に先立たれて、長生きなんかするもんじゃないってずっと思ってたのよ。でも、今となっては、長生きして良かったって本当に思ったわ。生きていれば、こんないいこともあるのね」

「長生きって門脇さん、まだお若いじゃないですか」

「まあ、康平君はいつもながらお上手ね」

 そう言って、お互い涙顔で笑い合った。


 その一週間後には、波多野さんの引越しが決まり、別れの挨拶をしに来てくれたが、同時に彼女は照れながら、二人目の子供を妊娠したことを教えてくれた。

 三日前には、美羽ちゃんが「私、友達じゃなくて彼女に昇格したの!」と報告してくれたし、今日は今日で、坂口さんと望と僕と三人で、居酒屋へ飲みに行く約束をしている。


 美容室「サンシャイン」を開いて本当に良かった。「サンシャイン」がなかったら、こんなに素晴らしい人たちと親しく付き合うことなんてなかったに違いない。




 生きていれば、悲しいこと、辛いことは山のようにある。けれども、それ以上に喜びや楽しみもあるのだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この物語は15年以上前に書かれたもので

当時は双子霊のことはよく知らずに書いていました。

その後、調べてみると、双子霊は同時期に生まれるとは限らず

年齢や住んでいる場所が離れていたり、知り合う確率が非常に低いのだそうです。

結ばれるときは、二人とも人間的に成熟していて

社会貢献するためという理由が大きいのだとか…。

なんだか、不思議な話ですが、本当だとしたらとてもロマンティックですね(笑)。

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