蛇 髪 半分
ある日、道端に黒い髪が横切るのに行き逢った。
髪は道の奥までずっと続いていた。
どうしたことだろう、と辿っていくと、やがて黒くて丸い塊が落ちているのを見つけた。
どうやらこれも人の髪で出来ているらしい。
見事な作品だ、誰がどんなふうに拵えたものだろう。
そんなことを考えていると、己の手指にも黒くて長い髪が巻き付いていることに気が付いた。
解こうとしてみたが、どうしても解かれない。
さては、呪詛や妖怪の類だったかしらんと気づいたが、如何ともし難い。
し難いがゆえに、私は積極的態度を取ることをやめ、そのままに打ち遣っておくことにした。
この髪は、私の前では蛇のように振る舞った。
手指に限らず、決まりの良い場所を探して私の体を流離う様でもあった。
胴体や手指ならまだしも、首や、耳に巻き付いたときには、辟易した。
私は消極的態度を崩さながったが、それでもそのうち、この蛇が自分の身体の一部になったような、尊ぶべきものである心持がした。
そう思ったところで、蛇がするりと私の体から抜けていった。
私は寂しいような、追いかけたいような気持ちを抑えて蛇を見送った。
蛇は、また元の黒い塊に戻っていくようでもあった。
蛇がいなくなったあとは、半分の自分だけが残ったような気がした。
私はそうして今日まで、半分の自分だけで取り澄ましている。




