初仕事よ
ダンジョンの一層にミサオは他の勇者達と共に歩いていた。
「アタシ勇者になって初めてダンジョン来たわ! めっちゃドキドキしてる」
「だいたいの人はそうだよね。なんたってダンジョンには一部の冒険者と勇者しか立ち入りを許可されてないからね」
ミサオの言葉にリーダーのゼナが反応する。優しそうな笑顔が印象的だ。
このリーダー、顔は中の上ってところね……
勇者の面々を見渡しミサオは心の中で呟いた。
ダンジョンには男が6人、女が2人の計8人で来ている。
リーダーのゼナ、体格が良いマッキリー、知的そうなカミル、ヤンチャそうなローダー、俺様的なトガ、無口なヨドンが男の勇者。
ミサオと眼鏡をかけたドロシーが女の勇者だ。
「わ、私も初めてです」
「やっぱりぃ? ドロシーちゃんさっきからキョドってるもんね」
「フッ、このダンジョンには並みのモンスターしか出ないから安心したまえ。いざとなったら我々が女性2人を守る」
「あぁ! この俺がどんなモンスターだってぶん投げてやる!」
ローダーとカミル、マッキリーがドロシーを気遣う。
「は、はい。ありがとうございます」
ぎこちなく笑ってはいたが、ドロシーはそれでも緊張を解けずにいた。
「今日は俺様の華麗な技の数々を2人に見せてあげよう。なぁヨドン?」
「………………」
「はぁ、今日も君は黙りかな?」
トガが、ヨドンへ話を振るが、喋らないヨドンに『ヤレヤレ』といったポーズをとる。
「皆仲がいいのね?」
「まぁね。僕達はだいたいこのメンバーでパーティーを組んでモンスターを狩ってるんだ。それぞれの役割も決まってるし、何より連携がとりやすいからね」
「ナルホドね、じゃあ今日はそんな先輩達にイロイロ教えてもらおうかしら」
「フッ、良い心がけだ、勇者見習いとして私達からいろいろ学んでくれ」
「あの、今回は何層まで降りるのですか?」
ドロシーが質問をした。
「今回は5層までだよ」
ゼナが優しく教える。
「ゴメンナサイ、アタシにも教えて。今回の目的は何なの? アタシ協会からは何もきいてないのよ」
ミサオも重ねた。
「そうなんです。私も聞いてなくて……同行する勇者に聞けばわかるって言われて……」
「それよ! まったくあのハゲ、ぶっきらぼうったら無かったわ。あの頭ひっぱたいて紅葉マークでも作ってやろうと思ったわよ!」
あー思い出しただけでイライラするわ。
「プッ! 姉ちゃん面白れぇな! アレは協会の雑用係だ。確かにアイツは愛想が無ぇ」
「キミなかなか言うねぇ! キミとは気が合いそうだ」
マッキリーとローダーが嬉しそうにミサオに絡む。
「ありがとう。ミサオって呼んで」
ミサオはメンバー全員と握手を求めた。
「フッ、ミサオの言い分はわからんでもないが、目上の人間には敬意も必要だよ?」
カミルが握手を交わしながらミサオへ注意する。
「確かにその通りだわ。ケド、それは最低限の礼儀が必要じゃない? じゃなきゃお互いの信頼関係なんて築けないわよ」
「フッ、それは一理あるな」
「でしょ? それが出来ない人間に下っぱとはいえ協会の仕事を任せるのは問題よ」
「ミサオ。君の言うことはもっともだ。ヨドン、君も耳が痛いんじゃないかい?」
「………………」
「ふぅ……」
トガがヨドンをいじるが変わらずヨドンは無反応だった。
「ねぇ、話が逸れちゃったわ。それよりも今回の目的を教えて」
「おっと、そうだね。目的は最近5層に現れた魔物の調査だよ」
「魔物の調査?」
「フッ、このダンジョンは深くてね、深層の魔物がたまに上がって来るんだ」
「まぁ、そんなヤバい魔物が現れたらソッコーでトンズラすっけど。まぁ俺達なら調査じゃなくって殺しておしまいっしょ」
「そうだな! 俺が一撃で倒してくれるわ」
「へぇ、調査なのに殺しちゃってもいいのね?」
「その辺は僕たち勇者の判断に任されてるんだよ。僕たちが危険だと判断したら一度戻って、改めて討伐隊を編成したり、倒せそうならその場で殺してその魔物の一部を持ち帰るんだ」
「魔物を倒した証明をするんですね」
「フッ、そういうことだ」
なるほどね。じゃあこの先輩達のお手並み拝見って訳ね。
「今日は4層まで行ってそこで一泊して、明日5層に降りよう」
「ダンジョンの中で休めるの? 危険じゃない?」
「そ、そうですよ。魔物に囲まれたら……」
「そいつは心配いらねぇ」
「4層には防御結界が張られている場所があって、ソコには魔物が中に入って来れないんだよ」
「防御結界?」
「そうそう! ソコん中じゃよっぽどのヤツじゃなきゃ入って来れないんだ」
「まぁ、俺様がいれば万が一魔物が入って来ても瞬殺だけどな」
「そうだったんですね」
ドロシーは胸を撫で下ろした。
「大体わかったかな? じゃあ4層まで一気に降りようか」
ミサオ達は4層目指した。
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