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⑤同率という世界

 電車の中に入る。そして、座席ですぐに、スマホの明かりを灯す。淡い光が顔を、やさしく照らす。現実をまともには見ず、スマホの先を見ていた。

 ポケットのファスナーを、勢いよく開けた。スムーズに開き、オジサンの連絡先を出して広げた。


 そこに書かれたのは、オジサンにしてはカワイイ文字。かなりの丸文字に、笑みが溢れた。やっぱり、他の人となんか違う。

 メッセージを送ろうと、指を動かし進んだ。そこは、彼氏からのメッセージで溢れていた。


 『これから会おう』とか。『今どこにいるの?』とか。メッセージは、二桁を遥かに越えていた。そこに、恐怖を覚えた。

 電車の揺れ以上の揺れを、身体から放っている感覚。もう、脳が彼氏を消そうとしていた。


 電話も、二桁を越えていた。ため息が出た。電車の線路の音が、急激に強くなる。鼓動も、それに合わせるように、強くなってきた。

 今までも、こんなに束縛はあっただろうか。彼氏との想い出は、まったく記憶に残っていなかった。もう終わりかもしれない。


 暗い中を、電車は行く。窓の外は、ずっとずっと同じ景色だ。黒い壁中心だ。

 走行音の変化が嬉しかったのは、これが初めてだ。


 オジサンにメッセージを送った。

『火曜日が休みです』

『その日の午前中からは、空いてますか?』

『デートを、その日にしたいと思っています』

 そう文字を打っているときの、私の顔は笑っていた。自然な笑いをしていた。


 カット中に、オジサンが言っていた。老若男女関係なく、同率一位の存在として接していると。誰も、単独一位にすることが出来ないと。

 私は、単独一位になれなくてもいいと思った。誰にでも、同じ気持ちで接することが出来る。それは、貴重だから。


 独特すぎる。友達や恋人にはなれないってこと。そう考えた。親しくなってから、まだ同率一位でいるとか、想像できない。

 相手の気持ちには、答えていきたい。そう、オジサンは言っていた。だから、大丈夫そうだ。私は、愛されるより、愛したい人だから。

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