表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
813/821

第五十九話Part2

『いけ……やるんだ……出来る……聞け……』

「うる……さい」


 小頭の頭には誰かの声が響いてた。苦しくて、溶けそうで……体を小さく小さくしてる小頭。頭に響く声しか聞こえなくなって、朦朧とする意識のなか、いつしか体と精神が分離するような……そんな気がしてた。自分は真っ暗な中に閉じ込められて……ただ小さく……まるで穴の空いた壁を覗くようにしか視界が確保されない。


 ゆっくりゆっくりと、縮こまってた自分が立ち上がったのがわかった小頭。そしてゆっくりとゆっくりとあるいてる。それは小頭の意思じゃない。ふらふらとヤケに頭を揺らしてるのか、小さな穴からしか外が見えない小頭はちょっと酔いそうである。

 よく考えたら体調はこの真っ暗な場所に閉じ込められたときにはマシになってた。ちょっと頭がぼんやりしてるくらいだ。体の末端の感覚も薄い気がする。それは精神と体が分離してる影響かもしれない。


 でもやけに声ははっきりと聞こえてる。誰かわからない声。知り合いにはいないと思える声だった。

 それがずっと「やれ」とか「いけ」とかいってくる。ふらふらと歩いてる自分の身体。それを見ていて思った。


「私の体……もしかして……」


 どうやら小頭の体は鬼女を目指してるみたいだ。彼女は喜々として仏像の妖怪をなぶってる。そんな嵐のような場所に近づくのは危険だ。だいたい戦場からははなれてるように……と言われてる。

 特に鬼女には近づかないように……とね。それは彼女の戦い方を見てるとわかる。彼女は戦いを楽しむタイプで、そして周囲なんて結構御構い無しに戦うタイプなのだ。鬼男はそこら辺もっとドライだ。義務のように戦って、最善の選択肢をとる……という感じ。


 まさに軍人……といった印象である。だから下手に戦闘中の鬼女に近寄ったら、攻撃に巻き込まれても文句なんて言えない。でも……体は近寄ってる。


「だめ! やめて!」

 

 そんな風に暗い場所で叫んでも、どうやら周囲の声の方が強くて、自分自身の言葉なのに、野々野小頭の体は止まってくれない。


「たす……けて……」


 弱々しく声を出したのは小頭だ。けどそれは小頭の意思の声じゃない。勝手に小頭の体はそんな声を出してた。そしてそれに反応した鬼女がこっちを振り返る。


「なに、危ないわよ?」


 そんな風にぶっきらぼうにいった鬼女に、小頭の体は手を伸ばして転ぶように倒れかかった。思わず小頭を支える鬼女。けど……それを――「だめ!!」――と小頭は暗い空間で必死に訴えてた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ