第五十八話Part2
鬼たちはもう大人しく自分たちの順番を待ってる妖怪たちでさえ、どうやらさっさと門の向こうへと投げ入れることにしたようだ。投げ入れてしまえば、もしも途中で意識を取り戻したとしても、彼等自身では戻って来る術はない。
いや、実際門からの出入りがどういう風になってるのか……それを小頭達……ひいては鬼たちだって正確に知ってるわけじゃない。だって鬼たちだって、気づいたらこっちにきてた……みたいなもので、あの門を通った記憶というのは曖昧なのだ。流されるように通った感覚はあるかもしれない。
でもそれだけ。だからきっとあの門の向こうには流れがあるんだろう。そして門に入った妖怪で戻ってきた者は今のところいない。だから流れも出る流れと元の世界につながる流れ……が有るんじゃないか? と思ってる。
『二人共!」
そんな声が鬼男と鬼女に届く。視線を向けると息を切らせながら走ってきてる幾世の姿があった。二人にとっての見慣れた姿。いつものような動きやすいボーイッシュな姿じゃなく、薄手だけどしっかりとしたワンピースだ。本当なら真っ白なその服には、ところどころ泥汚れがみえる。ここにくるまでには転んだりしたのかもしれない。
「どうしたの? こんなところまで来ちゃって」
鬼女がそんなふうに軽く口を開く。こういう場面で真っ先に口を開くのは鬼女の役目だ。鬼男は寡黙なのだ。あんまり余計な事を口に出したりしない。
「二人共、大妖怪の影響を解いてる妖怪がいるわ。多分!」
「まあ、そうよね。なんとなくそんな気はしてた」
コクリと鬼男もその鬼女の言葉に同意した。やっぱり二人共気づいてたらしい。別に二人共戦闘をやれればいい! みたいな戦闘民族ではない。いや、鬼女はそれっぽいが、鬼男は戦ってるときだって常に考えてるようなやつだ。
だから次から次に湧いてくる洗脳が解けた妖怪に対して、「おかしい」――と思ってたんだろう。
「その特定の奴を探し出して倒したほうがいいっていいたいんでしょ?」
「そうよ。このままじゃ、目覚める妖怪が増えていくわ」
「けど、それは難しくない?」
「それは……」
鬼女の言うことは最もだ。それはおばあちゃんだってわかってる。だってわざわざ姿を隠してる妖怪を見つけるなんて……しかもこれだけの数だ。特別な儀式とかしてるのなら、分かり易いが……上から見てる限りそんなのはいなかった。そもそもこの場所じゃなくもっと別の場所にいる可能性だってある。
よほどのアホでもない限り、このタイミングでそいつが姿を見せるってこともないだろうし……ならばどうやってかしてこちらから見つけるしかない。
「私が、見つけて見せます」
するとそうおばあちゃんは宣言した。