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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
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7P

次の日、学校で野々野足軽は隈が出来た目元こすって授業に出てた。でもその頭は授業なんて聞いてなくて、早くアクアは連れ戻さないと……という事でいっぱいだった。あの後、必死にアクアを引っ張り出そうと力を使ってみたが、上手くいかなかった。一応排水管の水に力を通すとアクアの声は聞こえた。でも力が届くところを超えたら聞こえなくなった。


 野々野足軽は急いで外にでて、排水管をたどったり、マンホールの上から力を使ってその下の汚水に力で触れたりした。近くの川にも行ったが、でも駄目だった。そのあとはネットで、配管の先がどこに行くのかを調べてみたりもした。だから今日は下水処理施設とか浄水施設とかそこら辺を回るつもりだ。


 なにせアクアは意志がある水である。何が起きるかわからない。予測ができないから野々野足軽は怖かった。それにアクアは生まれたばかりで少しの水の集合体でしかなかった。


 それがいきなりたくさんの水に囲まれたら、その存在はどうなってしまうのだろう――と思ってた。最悪――


(そのまま他の水に溶けたりするんじゃ)


 ――そんなことばかり考えてた。


「心ここにあらずね。最近はいつもそうだったけど、真面目な野々野君には珍しい」


 ふとそんな事を野々野足軽の隣の席の女子が言ってきた。彼女は今時の女子高生にしてはメイク一つしてない飾り気何て微塵もなくて愛想もない事で有名なクラスメイトの女子の『平賀 式部』(ひらが しきぶ)だった。 


 けどそんな飾りけない平賀式部だけど、その名は有名だ。なにせメイクなんていらない程にその容姿は整ってるからだ。漆黒を宿す髪は枝毛一つなく垂れ下がり、その対比として彼女の白い肌がよく映える。体は細く、だけど、出てる所は出てる体形で、彼女を毎夜のおかずとしてる男子は多いだろう。


 更にその顔のパーツは一つ一つを神様が配置したのかと思うほどに完璧で、更に言えば声まで美しかった。


 野々野足軽もこのクラスになれて彼女の隣でどれだけよかった――と思ったことか。まあ殆ど野々野足軽と平賀式部は話したことはないが。今だって声を掛けられて驚いたくらいだ。


 いつも彼女は本を読んでいる。古式めかしく紙の本にカバーをつけて……だ。教科書までタブレット化した時代にわざわざ紙で本を読む人は少ない。なにせ圧倒的にタブレットの方が便利だからだ。


 でもだからと言って紙の本がなくなったかといえばそうではない。あるけど高級品になってる。嗜好品といっていい。物好きが趣味で集めるもの……という位置づけだ。


 そんなものをこれ見よがしにもって自分の世界に浸ってる平賀式部は当然だけど、このクラスではういていた。というかこの学校から浮いてるといってもいい。美人過ぎる……というのももちろんあると思うが、彼女のミステリアスさがそれを際立たせてるんだと、野々野足軽は思ってた。


 まあそれを悪くも思ってはなかった。ただ素直に「格好いい」と野々野足軽は思ってる。


「平賀さん……わかっちゃう?」


「ええ、だって私、いつも君の事見てるから」


「え?」


「冗談よ」


「そっか冗談かぁ」


 一瞬ドキッとした野々野足軽。平賀式部はそんな野々野足軽をつぶさに観察してる。その仕草、その呼吸……そしていつもどのくらい髪が伸びたとか、今日は爪切ってないなとか……そんな些細な事を観察してた。だからこそ平賀式部は野々野足軽の些細な変化も見逃さない。冗談とか言ってるが、実際は全然冗談なんかじゃなかった。


「でも本当に眠そうね。珍しい。いつもキリッとしてるのに」


「そんなキリッとなんてしたことないよ。よく友達にも眠たそうにしてるって言われるし」


 それは嘘じゃなかった。野乃野足軽はキリッとしてるなんて言われたこと無い。むしろ自分では冴え渡ってるときでさえ、眠そうに見られる見た目である。それなのに彼女『平賀 式部』はキリッとしてると言ってくれる。


 クラスでも、いや学校でも指折りの美少女にそう言われていい気がしない男子高校生なんていないだろう。だから勿論野乃野足軽だってそうだ。なんとか平静を装ってるが、内心は「うおおおおお」とか叫んでた。


「最近はなんだか楽しそうに見えたわ」


「え?」


 野乃野足軽を観て、そんなことを平賀式部は言う。その柔らかな微笑みに野乃野足軽は照れくさくなって視線をそらしてた。その隙きになにやら平賀式部は視線を彼の周囲にそそぐ。その動作や、机に出してる物。スマホの画面なんかを覗き込むために、ちょっと身を乗り出してる。


「はは、お世辞でも嬉しいよ」


「お世辞なんかじゃないわ。だって野乃野君、前はあんまり楽しそうじゃなかったもの」


「いや……そんなことは……ないよ」


「そうかしら」


 野乃野足軽は気付いてない。いつの間にか、身を乗り出して色々と観られてることに。どうやら平賀式部はその可愛さに自覚が合って、そして野乃野足軽がどういう反応をするであろうかということまで計算して、やってる節が見える。そうやって平賀式部はスマホから彼が観てた情報を得た。


「ああ、ちょっと俺、授業始まる前にトイレに行ってくるよ!」


 数えるほどしか無い女子との……しかもとびきりの美少女との会話に耐えきれなくなったのか、そう行って立ち上がって教室から出ていく野乃野足軽。そんな彼に平賀式部は「行ってらっしゃい」といっていた。野乃野足軽には聞こえてなかったが……

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