第五十六話Part3
門の中へと魑魅魍魎たちがすべて消えるまで、一体どれだけかかるのか。最初よりは確かに妖怪たちの数は少なくなってる。それは間違いない。小頭たちが家に帰って一家団欒して眠らされた時間は数時間くらいで、今は深夜といわれる時間になってる。時計の針はてっぺんを回って、昨日から明日へとなってた。だからかなりの時間は経ってる。かなりの数の妖怪があの門に入っていったはずだ。けど……それでも、まだまだいる。
「結界は大丈夫なのかな?」
ぽつりとそんな風な言葉が出てきた。小頭が懸念してるのはこの状況を作り出すために封印を施した大妖怪たちの事をいってる。四体の大妖怪というか、ひときわ強力な妖怪を封印してその力を利用することによってこれだけの妖怪に命令を出してるのだ。やっぱり妖怪とか上下関係厳しいそうじゃんというイメージがね。なにせ実力至上主義っぽい。弱肉強食といってもいい。
それは正しかったようで、強い力には奴らは逆らえないのだ。でもそれは逆にいうと、その四体の大妖怪にこの状況は支えられてる……といえる。結界は強固だし、大丈夫と鬼女とかはいってる。けど……だ。懸念はある。
「ふぁいじょうふぃよ。ようふぁいふぁちは、全部ふぉふぉにいるわぁ」
口にたくさんのものを詰めこんでるから、何を言ってるのか正直言ってわかりにくい鬼女である。けど、どうやら小頭はわかったみたいだ。
「でも、私たちは家にいるとき、襲われたよ。影響を受けてない妖怪がいないわけじゃないみたい」
「ふぇ~」
興味なさそうな返事を返す鬼女。いや、もうちょっと危機感もってよ……と小頭は思う。だからちょっと強い語気になる。
「わかってる!? これってもしかしたら結界を壊そうとする妖怪がいるかもしれないってことだよ!?」
その可能性……それを小頭は心配してる。だってもしも大妖怪が解放されたら、再びこの町に妖怪たちが拡散してしまうだろう。もしかしたらこの町だけにとどまらないかも? そうなったら世界に妖怪が溢れる? わからないが、そんなことになったら、この世界が本当の意味で大変なことになる可能性はある。今はまだこの町だけで、そして誰も気付いてないから大事になってないが、あんな魑魅魍魎が世界に拡散されたらどうなるのか……どうなるのか……具体的には小頭の頭では想像できないが、とにかく大変なことになるだろうとは思ってる。
まあ世界なんかよりも目の前の事だけど……下手したら兄である野々野足軽はこの世界に戻ってくることはできず、鬼男も鬼女も自身の世界に帰ることはできなくなってしまう。そんなのは嫌だ……と小頭は思ってる。二人とはそんなに長い時間一緒にいる訳じゃない。人生の時間の中ではとっても短い時間だろう。けどきっと……野々野小頭はこの期間の事を忘れることはないだろうって思ってる。
こんな刺激的な日々を忘れることはきっとない。