第五十六話part2
ハッムハムハム――がぶっ、ムシャムシャ――ゴクゴクゴク――アッム
大きな口を開けて鬼女は小頭たちが持ってきた料理を掻っ込んでる。女性なのに、そこにあるのは上品さ……なんてものはない。地面のランチョンマットの上に広げた沢山の料理。まるで一人運動会でも開催してるかのような……そんな料理の量なのに、どんどんとまるで吸引力が変わらない掃除機のように鬼女は料理をその大きな……けど女性らしいしなやかな体に収めていく。
(いやいや、どう考えてももう胃袋の許容量超えてない? 鬼男の言うとおりだったね)
広げられてる料理は正月とかで使うような縦に積み重なる重箱である。それが八つ。よくそんなに重箱があったな……とか思うが、田舎というのは人が集まるのが多いのかもしれない。まあだからって重箱で出すなんてしないだろが。ふつうはたくさん人が集まったら大皿とかを使うものではないだろうか? まあけどなんでこれだのげ重箱があったのかなんてのはどうでもいい。
八つの重箱に詰め込まれてたおにぎりや脂っこい食事……さすがの運動部の高校生男子だってきつそうなメニューだったのに、彼女は一人でそれを消費していく。小頭たちは誰一人として、手をつけてはない。だからこの弁当はすべて鬼女のためのもの。
「こんなに?」
それは事前に鬼男に小頭が伝えた言葉だ。けど、それは正しかった。雪崩れ込むようにかきこまれていく料理たち。それをみると、本当に噛んでる? 小頭は思う。まるで飲み物のように炭水化物を流し込んでいくんだ。そう思っても仕方ない。
「こんなことが……」
「すごいの。生きてる間にこんな光景が見れるとは」
そういうのはおとうさんとおじいちゃんだ。門の前に大量の魑魅魍魎がいる。それを信じられないような目でみてる。実際この光景はこの世のものではないような……そんな光景だ。現実なんて思いたくない光景。けど……これは間違いなく現実だ。
「のう、こんな未来をあいつらは見てたのかの?」
そんな風におじいちゃんがいった。誰に言ったのか? と隣のおとうさんもわからなかったようだ。けど、それに反応したのはおばあちゃんだった。きっとそれか長年連れ添った夫婦ってことなんだろうって小頭は思った。
「そう……かもしれないです。けどきっと、あの村の人たちじゃこんなこと出来ませんでしたよ」
「ははっそうじゃの。あれは夢ではしかなかった。呪術なんてものはあの頃はなかった」
「はい」
小頭も二人の夢をみた。だから、何を言ってるのかわかった。お父さんやお母さんはわからないかもしれない。でも小頭はわかる。二人がいってるのはおばあちゃんの故郷の村の事だろう。呪術を信仰してた村。あの人たちが何を見てたのか。この光景がみたかったのか……確かに呪術師とかはこの光景をみたら興奮とかしそうだなって小頭もおもった。