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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第四十八話Part1


「くそっ……ここもか……」


 そういって少年は夜に紛れる。なんとかあの小屋で幾代の村の大人たちから逃れることが出来た。その時に幾代だけじゃなく、少年も恐怖を持った。それは自分の事を思って……の事じゃない。このままじゃ幾代を助けきる事は出来ない……という恐怖だ。

 だってそうだろう。さっきの小屋での出来事はとても運がよかった。それに尽きると少年は思ってた。


「俺はヒーローになれる!!」


 そんな風に思えればどれだけよかったのか……と少年は思う。なんだって出来る筈……とか、ヒーローにあこがれる自分が確かにあったはずだ。小学生なんて格好いい物には無条件であこがれるものだろう。少年だって変わらない。

 それに少年は田舎の小学生らしく、野山を庭に遊びまわってるような……そんな子供らしい子供だ。だから身体能力でいえば、そこらのふとっちょの大人なんかには負けない気持ちはあった。そう思ってた。

 けど……『大人』とはそれだけで強いのだ。それを少年は実感してた。さっきは組み付かれることとかなかったが、もしも一回でも捕まってしまったら、少年はきっと逃げられない。そして少年が捕まると自動的に幾代も捕まることになる。だって……だってこいつは……


 にへら――


 視線を向けるとそんな諦めたような笑顔を見せる。それがとても少年は苦しかった。幾代は諦めてる。本当に逃げられる……なんて思ってない。だからきっと少年が捕まると彼女は自分を代償にするだろうってことがわかってた。


 そんな恐怖と彼女の諦め……それを感じれたから、少年は自分の親に……大人であって、そして自分の絶対の味方である親に頼ることを選択した。色々と懸念だってあったけど、でも……それしか少年にはなかった。本当の意味で幾代を助けれるかもしれない可能性……それは少年には親しかなかったのだ。


 でもどうやら一歩遅かった。道……そうおよそ道、といえる場所は村の大人たちにおさえられてた。やっぱり同じ地元民である。山の道だってちゃんとわかってそこを抑えてた。これじゃあ、自宅へと帰る事はできない。

 

 少年と少女は、森を歩くしかなかった。二人は無言で森の中を手を繋いで歩く。幾代も少年に何かいう事はない。


「もういいよ」


 それを言ったら、楽にさせることが出来るかもしれない。でも……それを言った時の少年の反応が幾代は怖かった。だって……少年は幾代の手を強く……それは強く握ってたからだ。その強さから伝わってくるんだ。


「諦めるな」


 ――と。

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