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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第四十三話part4

 音が聞こえてた。


――カンカンカンカンカンカン! カンカンカンカンカンカン! ――


(うるさいな)


 あの音だ。でも今は更にうるさく聞こえてた。けど不思議だった。ふと周囲をみても他の人達はこの広場の中央にいる育代に憎しみを向けるので夢中でこの音は聞こえてないようだ。

 まん丸い月……周囲の雰囲気なんて気にせずに育代はそれをみてる。


 カランポロン


  小さな小人の様な人が数人、前にでてくる。でもそれは子供……ではない。よく見るとわかる。小人の様に見えるのはその腰がくの字に曲がってるからだ。つまりはこの植物で作られたような楽器を持ち合わせてきた数人の小さな人たちは、腰を曲げてなかったらそこそこある……ということだろう。

 その楽器を持ち合わせてる数人は、全員が腰が曲がってて、そして顔には布をあてがってて顔はみえない。でもあれだけ腰が曲がってる……とい:なればきっと高齢なお歳の人達なのだろう。


「皆さん」


 ざわっとする広場に集まってる人達。一瞬で空気が変わった。さっきまで中央にいる育代に向けてた敵意の様なものが、声を出したその人によって、好意的なそれにかわった。そしてそれをやったのは……


「花月様!」

「おお、花月様!」

「花月様……」

「花月様……」


 口々に皆がその名を口にする。ついさっき出て来た腰が曲がり切った人達とは違い、花月様はスッと体を伸ばし、歩いてくる。そして花月様:様の為に皆が道を作り、そこを歩いてくる花月様は、育代の前にたつ。


「彼女は素晴らしい贄に成ろうとしてるのです。憎しみを向けるのはやめてあげてください。これは私達の悲願なのですから」


 そういって優しく微笑む花月さま。彼女にそう言われて、周囲の村人たちは、育代に対してさっきまでとは違う言葉をかけてくる。


「ごめんな、頑張れよ」

「期待してるぞ」

「そうだよな。これは必要な事。ありがとう」

「ありがとう」

「ありがとう」


 そんな風な「ありがとう」の合唱に変わっていく。そしてその中心で花月様がいう。


「ほら、皆さんがあなたに感謝してますよ育代」


 ニコニコだけど、その花月様の笑顔はどちらかというと、光というよりも、闇……だった。そして演奏が始まった。腰が曲がり切って顔の前に布をつけてる老人たちが植物の楽器を演奏してる。闇夜に広がるその音と共に、この場に集まった村人たちが、同じ唄をそらんじてる。

 別にそれで何か気分がおかしくなる……という事は育代は別になかった。そもそもが今の育代は自分で考える力を奪われてる。花月様は縄の内側にやってくる。二人して向かい合う二人。そして花月様は着物の内側から何かを取りだす。それは瓶に入れられた液体のようなもの。


「さあ、この月の祝福を飲みなさい」


 そう彼女はいった。

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