第四十三話Part1
カンカンカンカン……そんな音が聞こえる。
「ここは……」
彼女は周囲を見回して頭を抑えた。そして……ふと気づいた。
「ああそっか……いつもの……音」
彼女はぼやけてた思考を取り戻していく。まとってるのはうっすい白い布一つ。おしりに感じる感触はゴツゴツで……そして……眼の前には木で組まれて格子。唯一ある扉には鉄の鍵が備え付けられてる。
そう……彼女がいる場所は牢屋みたいな場所だった。けど閉塞感があるわけじゃない。まるで洞窟や鍾乳洞と言われるような……そんな場所で、天井からは突起状の岩が幾重も伸びて、ロウソクの光が反射してそこそこ明るい。実は背後は奥に行けるようになってる。でも……その先に出口がないのを彼女はしってた。
彼女は虚ろな瞳に……首にはお蓋がいくつもぶら下がってた。手足は赤く……ところどころきれて血が滲んだ跡があった。
カンカンカンカン……
ずっと聞こえてくるその音。ここに押し込まれたらずっと聞こえてくるそれを彼女は「嫌だな」と思って聞いてる。ここに押し込まれたら何をやっても無駄で……下手に叫んでも暴れても体力の無駄なんだと……彼女はもうわかってるようだ。
気づいてから何時間が経っただろうか? ずっとあの音は続いてる。けど違う音があるのに気づく。ズリズリ……ゆっくりと何かが引きずられるような……そんな音。鍾乳洞の独特の明かり。そしてそれも「儀式」には大事らしい。この光に当てられる事が贄には必要なのだ。大きく壁に映る影。そこにはまるで丸まってるような影がゆっくりと動いてた。けど……
(あれ?)
違和感がある。それは少女の記憶とつなぎ合わせた時の違和感。そしてさっき見た影との差異の違和感。牢の前には一人の女が立ってる。神秘的で、美しい女性が背筋を伸ばして立ってた。その衣装は着物を重ねたような豪華なもの。
決してこんな場所に着てくるような、そんな服じゃないだろう。
「反省はできましたか?」
透き通るような声。でも……
「つっ……」
何故か少女には違和感があった。更にいうと、その声は彼女には二重に聞こえてた。透き通るような声と同時に、もっとしわがれた老婆のような声……それが聞こえてて、変だなって思う。
彼女は目を向ける。目の前の女の正体を見破ろうと……そんな疑惑の目を向ける。
「反抗的な目ですね。どうしてでしょう? あなたはもっと『良い子』だったのに」
頬に手をあてて、彼女は「はぁ」と息を吐く。艶めかしい。女でも見惚れそうな仕草だ。すると彼女は手を少女にむけた。そして開いた手から溢れる一つの石。それは緑色の歪な石で紐でつながって彼女の人差し指からぶら下がってるようだった。