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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第四十一話part1

「バカバカバカ! 放してよ!」


 小頭は現実に戻ってきてた。そして自分を抱きかかえてる鬼男を認識すると、その目に涙をいっぱい貯めて、思いっきりその胸を叩いていた。鬼男は筋肉の鎧に覆われてる大男である。はっきり言って最初の一発で小頭は気づいてた。


(いったー)


 ――てね。でもだからってこの恨みをぶつけないわけにはいかなかったのだ。全然ダメージになんかなってないとわかってる。でもそれでもこの悔しい感情を目の前のこの鬼にぶつけないとやってられない。だからだんだんと小頭の手の方が赤くなってしまってるとしても――「なんで! なんで余計な事したのよ!」――と叫んでしまう。そしてそれを鬼男は甘んじて受け止めてるのだ。それがまた小頭には気に入らないというか、なんというかだ。

 だってなにか言えるだろう。鬼男は何も言わないが、小頭はこいつきっとわかってるんだ……と思ってた。小頭があれが夢だとわかってて、それでもあの夢に浸ることを選択したという事を……まさかとは思うが、小頭の選択した先をつぶしたから、鬼男は何も言わず、ただ小頭の癇癪を受け止めているのかもしれない。


(悪いとか思ってる訳? 悪いのは私でしょうが!!)


 ひときわ強く、小頭の鬼男の胸板を叩いた。それでしびれてくるのは自分の腕の方だ。そしてそのまま泣きながら小頭は額を鬼男の胸に預けた。


(わかってる。私が弱かったんだ。力がないとかじゃない。私の心が弱った。夢は夢でしかないのに……)


 小頭は自分のその弱さを自覚してた。夢に流されてしまった。あまりにも心地よくて、そして本当に好きだったからだ。夢でも……いや夢だからこそ、望みが叶ってた。その夢を受け入れて、現実を放棄してしまった。そんな自分自身が一番悪いんだって、小頭はわかってる。だから鬼男のやったことは正しいとわかってるし、ありがたいとも実は思ってる。でも……だからって恋心を割り切れるか? と言ったらまた別なのだ。小頭はそこまで恋に憧れを抱いてたわけじゃない。

 同年代の女子に比べたら随分と現実的だったろう。でも、小頭はアランのせいで……と言っていいのかわからないが、本当の「恋」を知ってしまったんだ。そして最高の結末といっていいのか、結婚まで行ってしまった。

 夢にまで見た恋愛のゴールとも言える結婚。そこまで行ったからからこそ、まさに本当に彼との絆が永遠となったからこそ……それらがすべて『夢』だったと言うんだから、涙はとめどなく流れ出てきて止まることはなかった。

 なかったものが手に入ってしまったから……それがこぼれ落ちていく虚しさや悲しさが小頭の涙を溢れさせている。


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