第四十話part7
濃厚なそれをしたら、小頭の頭はとろけてしまった……と言っていいだろう。トローンと思考があやふやになって、顔は火照ってる。顔にすべての熱が集結してしまったかのようで、周囲の事なんてどうでもよくなってた。小頭は町中でイチャイチャとしてるカップルを見る度に下品だな――とか思ってた。けど今の小頭は、ようやくアランが唇を放したというのに、自分から背伸びしてその唇をむさぼりにいった。きっと小頭の事を考えてアランは濃厚だけど、中学生にふさわしいキスをしてた。
それは所謂ナチュラルキッス……みたいな? それこそただ『チュ』――とするようなそんなキス。けどただ唇を重ねてそしてそのままみたいな、あくまでも綺麗なキスといっていいだろう。アランはそれをやってた。でも、小頭はどうかというと、そんな配慮はどこ吹く風といっていい。体格的には完全に押し倒される側は小頭だ。それくらい体格に差がある。でも……小頭のキスはとても濃厚で、そして激しいそれだった。まるで貪るかのようなキスと言えばいいだろうか? 小頭は明らかにアランの口に舌をいれてる。
周囲にはそこそこの動植物に、さらに言えば兄である野々野足軽だっている。家族に自分の激しいキスが見られる……と言うのは世間では結構な羞恥ではないたろうか? けど周囲なんて見えてない小頭には関係ないんだろう。そんな小頭やアランの事を誰もが祝福してる。小頭はきっとここでなら、幸せになれる……そんな風に唾液をかわしながら思った。
すると、なんだが周囲の光景が変わっていく。
ゴーンゴーン……
そんな綺麗な音が響く。それに拍手もさっきまでよりももっと多い。まさに喝采……と呼べるほどの物になってる。
ぷはっ……
そんな風にようやく小頭はアランを開放した。そして気づく。何やら自分が真っ白なドレスに身を包んでる事に。そして彼は真っ白なタキシードだ。似合いすぎてる。王子様としか思えない風貌。周囲を見回すと、家族や知り合い、さらには知らない人もいっぱいで、大きなカメラだって沢山ある。そして神父……というと男性だが、なぜだか、修道服に身を包んだ草陰草案がいる。彼女はいった。
「誓いのキスを経て、あなた達は夫婦となったのです」
――とね。どうやら、これは結婚式らしいという事に小頭は気づいた。結婚式なんて今どきやるカップルの方がすくないんじゃない? フォトブライダルくらいでいいよ――とか思ってた立場の小頭だが、出来るなら豪勢な結婚式をやってみたい欲望? だろうか、それはあった。王子様のような相手とだれもかれもに祝福されて華やかな式を挙げる……それは全女性の憧れではないだろうか? 夢見がちな少女みたいな事はもう卒業して現実を見てるみたいな態度をとってた小頭だが、どうやらこの場所は彼女の内に追いやった欲望……それまでもかなえてくれるらしい。
絶対にオーダーメイドであろうドレスに、まるで城のような会場。そして全世界に中継されて祝福されてそうなそんな規模の式。優越感がやばかった。でもその時だ。ある一角のテーブルがなんか吹き飛んだ。そしてそこで何やらバリバリバリ……と音がする。素早く小頭を守ろうとする彼、流石は夫だと思った。