第四十話part6
「どうしたんだい? 僕の言葉は本当だよ」
甘ったるい顔と声のコンボ。はっきり言ってそんな風に言われたら、小頭だってぐっとくる。だって彼は超絶イケメンだ。日本の学校には曲がり間違ってもいないような、そのレベルである。そしてそんな相手が幻か何かだとわかってても小頭の事を「好き」とか「愛してる」とか言ってくれてるのだ。
(もういいんじゃないかな?)
そう思わない女性がいるだろうか? 確かに違和感がある。いや、小頭の場合は違和感どころの騒ぎじゃない。違和感というよりももっとはっきりとした、虚構……そうだと確信してるのだ。こんなことはあり得ないと、こんな現実は訪れなかったと……小頭ははっきりとわかってる。でも……だからなんだというのだろうか? これはきっとよくない状況だろうと、小頭はうすうす感づいてる。だっておかしい……でもこれだけのイケメンが自分を好いてきてるこの状況をきっぱりすっぱりと放り投げて捨てていける女がいるか? ――と小頭は自分に問いかける。
だからこその――(もういいんじゃないかな?)――である。つまりは別にこれでもいいんじゃない? である。おかしいしまずいだろう。でも、ここでなら彼は草陰草案ではなく、野々野小頭を愛してるのだ。好きで好きでたまらなかった超絶イケメンの彼が……全く持ってその心に入り込む余地さえなかった彼が今はその全てで小頭を愛してる。なら――
(もういいんじゃないかな?)
――である。完璧に小頭の気持ちはそっちに傾いてた。ここでなら彼が手に入る。愛してくれる……物語ではそんな移り気な彼じゃなく、自分が好きになったのは相手に一生懸命な彼だから……的な展開がくるんだろう。でも……小頭はそんなことなかった。小頭は自分を好きになってくれたのなら、それでいい――タイプの女だった。それに小頭だって彼『アラン・ハンス』をよく知ってるか? と言われたらそうじゃない。ほぼ一目惚れで、一気に燃え上がった恋だっだんだ。
もしも彼と知り合って何年も経って彼の人となりをしっかりと知ってたら、その内面から好きになってたのかもしれない。でも小頭とアランの出会いは最近で惚れた振ったも、ちょっとの間の事だ。だからその見た目がほぼ……なのだ。あとは紳士的な所とかだった。だから、全然小頭はこのアランを受け入れることが出来る。
小頭は彼の腕の袖をつかむ。そしてこういってみた。
「ねえ、キスできる?」
その答えにアランは迷う事はない。
「もちろん」
小頭を抱き寄せるアラン。そして二人の視線は交わって、息が絡まっていく。もういい……から小頭の思考はこれでいい……になった。