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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第三十九話part5

「もうー何するんだよー! ぷぎゃ!?」

「だからお前なぁ! そんな乱暴――べば!?」

「もう怒ったぞー!! らばぁあああああああ!?」


 あれから鬼男を小さくしたような小鬼は何回も小頭達の前に現れる。鬼男が殴ったダメージはなくなってるようだ。でもどうやら鬼男はそれを予想してたのか、ただ淡々と自分の幼少期と思しき姿の子供が現れたとしてもその度に鬼男は拳をめり込ませて撃退してくれてた。


(なにが目的だ?)


 そんな風に鬼男は考えてる。自分の幼少期の姿を模して、出てくることになんの意味があるのか? そう思ってたんだ。


「あの姿って……」

「気にするな」


 小頭にはそういう。気にしてはいけない。ああいう子供のような小さな姿で現れる存在はこちらの心の動揺を狙ってるというのが定石だ。相手は狡猾にこっちの弱点を突こうとしてる。

 ただそれだけ。それが経験則としてわかってるから、鬼男は容赦なんてかけないし、躊躇いだって一瞬だってしない。なにせ鬼男が躊躇うことで危険になるのは鬼男ではない。

 その被害を一番に被るのはなんの力も持たない小頭だ。鬼男はそれを一番わかってる。だから鬼男の行動は小頭を守るためのそれなんだ。

 でもだからって何回も出てくることを無視することもできない。なにせあれはきっと本体じゃない。だから殴ってもそこまで手ごたえはなかった。

 だからって放置できないから出てきたらすぐに追い払うために殴るが、それでこの事態が解決するわけじゃない……というのも鬼男にはわかってる。


「つっ……」

「大丈……ウッ……」


 鬼男は頭を振るう。小頭もその額を抑えてる。さっきから二人には片頭痛のようなことがたまに起こってる。


(いや、これは俺があれを殴った後に起こってる?)


 ふと、鬼男はそう思った。そして再び聞こえてくる足音。「またか」――と思いつつ油断はしない。けど次に現れたのは……子供の鬼男はじゃなかった。足音は子供のそれだったが、靄の奥からあられたのはボロボロの自分。今よりもいくらか若いが……それは確かに鬼男だった。それにちゃんと服を着てる。服もボロボロだ。そして首元に残った勲章の数。

 それがいつのころの自分なのか鬼男に教えてくる。そしてこれがただの彼の動揺を誘うためだけの苦し紛れなんかじゃなく、その心を見透かしたうえでの姿なのがわかる。

 でも……鬼男は拳に迷わず力を込めた。纏わされない。その気持ちがちゃんとある。けど今度の大きく成ったボロボロの鬼男は彼らをみてるようで……みてないような……


 よろよろと歩いて、そして膝を力なくつく。けどその顔は小頭達を見て微笑んでる。それでも鬼男は惑わされずに拳を振るう――


「よかった……助けられて」


 ――そんな言葉と共に目の前の自分が涙を流す。鬼男の拳は偽物の目の前で止まった。その時だ。


「お兄い!」


 そんな言葉共に、腕の中の小頭が飛び出す。いやそれは小頭のはずだった。でも……鬼男の視界に揺れた髪の色は白かった。そしてその後ろ姿は……明らかに小頭じゃない。


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