第三十九話part4
トッタトッタトッタ……
そんな風な音が聞こえてた。この白い濃霧の中、聞こえてくるそんな足音。どうやら小頭はその音に気付いてない。けど、もちろんだけど鬼男はそれに気づいてる。そしてもちろん警戒してる。
その足音だけで、この存在を鬼男は考察してる。冷静に……それも小頭を守るために。
(軽い……警戒心がない。これは一体?)
そんな風に実は無表情の奥で混乱してた。鬼男の印象としてはこの足音は軽すぎる。どんな化け物が敵として出てくるのかと思ってたが、これでは現れるのは小さな子供……の可能性が高い。
でもこんな所で子供? とも思う。それでも――
(油断はしない)
そう鬼男は誓ってる。なにせ狡猾な存在はその見た目で騙そうとしてくるとわかってるからだ。どんな姿の相手にだって油断は禁物。もしも子供が現れても、鬼男決してそいつを侮ったりしないだろう。
むしろ問題は小頭だ。小頭は斜に構えようとしてるが、結局の所人の良さが出るような……そんないい子である。一人でこんな所に現れた子供がいたらどうするか?
彼女の場合は優しく声を掛けようとする可能性は高い。だからこそ絶対にその体を離さないようにしよう……と鬼男はおもってる。とにかく勝ってな行動を許してはいけない。
少しでも離れたら、鬼男と小頭は分断される可能性だってある。今だって二人でいられるのはそれこそ二人がゼロ距離でいるから……の可能性は消えてない。少しでも距離が開いたら、この濃霧にのまれて分断されるかも。
そんな事を思ってると濃霧の向こうから声が聞こえてくる。
「あー! 女の子を泣かしてる奴がいるぞー!」
それをいったのは、小さな鬼の子。いや……見た目、まんま鬼男を小さくしたような小鬼がそこにいた。
「あれって……」
「気にするな。あれは敵だ」
端的にそういった鬼男。自分の幼少期にそっくりな存在。けど動揺なんてしてない。それよりも右手で小頭を支えつつ、左に力を集めてた。
そして何のためらいもなく、鬼男はその子供を殴り飛ばすじゃないか。吹っ飛んで濃霧の中へと消えていった小鬼。流石にちょっと小頭は引いてる。
「よ、よかったの?」
「これが最善だ」
鬼男はとても思い切りが良かった。そして微塵も罪悪感なんてなさそうだった。