表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
512/823

第七話Part3

「う……ん」

(お兄ちゃん?)


 小頭はかすむ視界の中で、兄の姿を見た……まるで恐ろしい存在の様な……怒気を放った足軽。そんなのは初めてで……それは……


「はっ!!」


 野々野小頭は目を開けた。大きく鼓動が波を打ってる。まるでさっきまで全速力で走ってたみたいな……そんな鼓動の速さだ。それに息も……「はっはっひふっひっひ」となんかおかしい。

 さらには小頭の目にはいつもの天井が見えてるのに、その天井に重なる様にある物がみえてた。それは大きな黒い男。それが小頭の上に覆いかぶさってくるような……そんな光景がみえてる。

 そのせいで、次第に息が上手くできなくなっていく……


「小頭、俺を見ろ」


 そんな優しい声。そして小頭の額にとん……と置かれた手。その手が不思議と小頭の中から悪夢というか不安というか? それを吸っているかのようだった。それになんか冷たいし……


(気持ちいい)


 ――と感じる。


「どうだ? 落ち着いたか?」


 なんか全てをわかってるような……そんな感じの野々野足軽の言葉に小頭はイラっとした。理不尽なのはわかってる。きっと何があったか野々野足軽はわかってて、だからこそ優しくしてる。まるで昔のように……けどそれが……


「うっさい、ばか」


 小頭は寝返りを打って足軽に背中を向けた。なんとなく名残惜しく感じた額……けどそれを振り払うように毛布を頭までかぶる。


「そうだよな……俺が家にいればあんなことには……ごめん」


 後ろの方でそんな後悔をにじませるような声が聞こえる。たしかに男性である野々野足軽がいれば、どうにかなったかもしれない。そもそも足軽がいたら、犯人が入ってくることもなかったかもしれない。


「怖かったよな……」


 ギュッと小頭は体を縮こませた。今も目を閉じるとあの光景が見える。足軽の手を感じてた時は思い出さなかったそれが、目を閉じるとよみがえる。


「……ん」


 ごそごそと毛布の中でやってた小頭。そして毛布の中から手をニュッとだした。それを見て足軽は何も言わずにその手を取ってくれた。


(なんで今更……中学に入ってからは私の事放っておいてたくせに……)


 小頭はそんな事を思ってた。何か言ったら付き合ってくれるが、昔のように四六時中一緒にいる……ということはない。小頭はわかってる。そもそもがそれは足軽も、そして小頭も成長したからだ。兄と……そして妹といつまでもべったりなんてしてられない。

 成長と共に、自然とそうなっていくものだ。けどそのズレ……成長のズレ。先に大人になっていく兄から先に妹離れしていくから、小頭は先に突き放されたって思ってる。

 だからこそ、今更……なんだ。優しくするなら、いつもしてなさいよ……それが小頭の要求だった。そこには今日のあの犯人の姿は一ミリも関係なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ