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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
424/833

422P

 スタスタとかなりの早歩きで歩いてる女性がいる。彼女には角と尻尾があるが、それを気にする人はなぜかいない。それなりの人が周囲にいて、少し服も髪も乱れてる女性。

 それに靴だって今や履いてない。ヒールを履いてたが、彼女はヒールが折れた靴を手に持ち、素足で歩いてた。そこに角と尻尾もあるのだ。これで注目されない……なんて無理があるだろう。


 けど実際は注目なんてされてない。誰もがいつもの風景を作り上げてる。まるで見えてないかのよう。


「ねえねえお姉さんどうしたの? そんなボロボロになって?」


 そんな風に声をかけてくるチャラそうな男の二人組。どうやら周囲から見えてないわけではないらしい。二人とも体格がよくそしてそこそこ顔もよかった。浅黒い肌をして、そして顔にはピアスがジャラジャラ。髪も派手な色をしてる。


「男にでも振られた? それなら俺たちが慰めてあげるよ?」

「そうそう、男の事は男で晴らすのが一番だよ」


 そんな事をいってくる。一通り体の状態を一瞥したようなその言葉には一切角や尻尾への言及はない。すると声をかけた女がとまった。そして僅かに視線を向けて小さく「そうね」と言ったのが、男達にはきこえた。それを聞いて男たちは内心「よっしゃ」とか「ちょろ」とか思っただろう。けど次の瞬間……彼らは知らない場所で棒立ちしてた。


 それは高級な店の前。二人は何が起きたのか分かってない。


「あれ? 俺たちなにやってるんだっけ?」

「さあ……なんでこんな場所? って俺もうバイトだ!」

「うわっ俺も!!」


 そんな感じで二人は別れた。そのあと、彼らが数十万の借金を抱えてるのを知るのはもう少し後になってからだろう。



 男達の金やカードを使って女は身だしなみを整えた。新しい服を新調して、靴も買った。乱れた髪は美容院でわざわざセットしてもらった。そしてきっちりともとに……いや最初以上になった女は男を放置して家路につく。


 彼の家……イケメンの彼の家である。そして今日起きたイライラ……それを解消してもらおうと彼に慰めてもらおうと思った。玄関で靴を脱いだと同時に上着を脱いでた。そしてスカートも歩くと同時にホックを外して、ストンと落とす。ブラも外して、そしてベッドで出て来た時からまぐわってたであろう女を無理矢理どかした。

 私が一番……という様なその態度。それに文句を言うのはこの場では一人しかいない。


「なにすんだよ?」

「ごめんなさい。けど私……がまんできな……」


 言葉が止まった。女の言葉が……そして唇がわなわなと震えてる。女の力は強まった。確実に悪魔としての格が高くなった。魂が混ざり合ってより完全に? それともより完成に近づいたといえる悪魔。だからこそ、今まで見えなかったものが見えた。

 それは仮面だ。目の前の男の顔には仮面があった。その奥の顔も見える。今まではこの女の気持ちが多く出てた。その思いは彼女の気持ちだった。けど今はどうだ? 悪魔とより交わった女は自問する。


(何も感じない)


 目の前の男に何もときめきはなかった。百年の恋も冷める瞬間……それは唐突だった。彼の為ならなんだって出来ると思ってた。すると決めてた。けど……今目の前にいる相手はなんだ? ただの芋のようにしか女には見えない。


「しょうがないな。ほら、いれるぞ」


 そんな事を言われて体に触れられた瞬間に寒気がした。そしてそれは起こった。頬に鮮血が跳ね返ってきた。頬だけじゃない。裸の体のいたるところに血がついてる。

 

「かはっ……なん……」


 それきり男は動かなくなった。彼の胸には女の尻尾が深く突き刺さってた。

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