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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
324/855

323P

「えっと、それはどういう? 何を言ってるのかわかってますか?」


 とりあえず野々野足軽は冷静にそう返す。ちなみに叩かれてヒリヒリしてた頬は力によって、すでにダメージはない。今やかなりの傷だって瞬時に直せるくらいには経験を積んだ野々野足軽だ。勿論その経験というのは草陰草案の事だ。

 彼女には沢山の人がその力欲しさに願い出てる。その中には様々な難病というべきものがある。それらで色々と経験を積んでいったわけだ。

 なのでこの程度は造作もない。一割……いや力なんてほぼ使ってないくらいの力で十分。そもそもが痛みを遮断だけでもしてれば、勝手に治ったであろうくらいだ。傷と呼べるほどの物でもない。なにせ外傷にはなってないのだから。

 けどある意味でそれはよかったのかもしれない。だって外傷として目に見えてしまうと、違和感が生まれてしまう。かさぶたもなく傷がきれいさっぱり消えてしまうとそれを知ってる人は「あれ?」と思うだろう。

 だって人間の体の治癒能力的に、傷ができたら、そこに血が集まって、それが固まる。内部では白血球とかなんやらが集まって血を固めて、外界から遮断して、それから内部で傷の治療とか細胞を再生とかするんだ。

 つまりはかさぶたは必須なのだ。最近は常に傷の表面を潤わせることでかさぶたとか出来ることを許さずに傷を早期に直すっていう絆創膏もあるらしいけど、それってつまりは自然ならかさぶたになる筈の役割を絆創膏がやってくれてるってことだろう。


 まあそもそもが野々野足軽なら傷にピンポイントに力を送ればそれで済むので、もう今までの医療技術なんてのはほぼ関係ない。やったことはないが、感覚的になくなった腕をはやせるくらいは出来そう……と思ってた。


 もしかしたら草陰草案の所に部位欠損の人が来たら試せるかもしれない。でも不思議と来ないんだ。なぜだろうか? 普通なら常識から外れまくった治癒能力を持った存在に真っ先に飛びつきそうなのが、そんな風に体の一部をなくしたような人だと思うけど……最近の義手とか義足とかは性能が良いのかもしれない。

 それか……常識……いや、この場合はもしかしたら先入観といってもいい。それが邪魔してるのかもしれない。大病とかいっても、内臓が無くなってるわけじゃない。大体そういうのは体内部で、体の機能がおかしくなってたりするもので五体としてはちゃんとある。

 けど部位欠損となったらもう『ない』のだ。だからないものはどうしようもないだろう……と勝手に考えてしまうのかもしれない。もしも直後だったら……とかあるかもしれないが、でもそんな事故直後の患者が草陰草案の元にやってくることなんてまずない。


 それこそが草陰草案がたまたまその場面に立ち会ってしまう……くらいの偶然でもない限り……まあつまりは野々野足軽にはビンタなんてのはあってないようなダメージだった……ということだ。


――パアン!


 だからって何度もダメージを追っていいわけじゃない。確かに美女に叩かれる……それを夢想する輩だっているだろう。けど……野々野足軽にはそんな性癖があるわけじゃない。


「私は差し出せっていってるの」

「――っつ!? あんた――」


 野々野足軽の胸の中にいた平賀式部は流石に二回目……ともなると我慢できなかったらしい。それに平賀式部は野々野足軽が優しいとしってる。女性に手を挙げるようなタイプでもないと。

 ならば……と思ったんだろう。それに彼氏が何回もぶたれて黙ってるなんて女がすたる……とも思ったのかもしれない。けど振り返ってその女に掴みかかろうとしたけど、その前に野々野足軽にさらにギュッとされて止められた。


「野々野君……」

「大丈夫」


 そういう野々野足軽は優しい顔で……それに余裕もある様に平賀式部は見えた。それがたとえ強がりだとしても……ここで自分が暴れるのはきっと違う。そんな風に平賀式部は思って、あふれ出しそうだった感情を鎮める。

 彼氏が大丈夫といってるのだ。ならば彼女である平賀式部はそれを信じるべきだと思ったんだろう。

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