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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
30/816

29P

そんな事を考えてる場合でもないから、耳に力を集める。最初らへんにした時はいきなり強化したから、今回はもっと慎重に……次第に遠くの音や離れてる人の喋り声が聞こえてくる。けど……


「聞こえないぞ?」


(別の声を聞こえるように調整してみてください。その子の声を聞こえるように、耳を傾けるように、寄り添ってください)


 別の声とは何だよ? 寄り添うようにってのは物理的に近づけ……ってことではないだろう。だって物理的に聴力を上げても普段の音が大きく聞こえるとか、遠くの声も聞こえるようになる……とかでしかない。


 それだとこの石……魂を宿した石の言葉を聞くのとには多分だけど違うんだろう。じゃあ何が違うのか……チャンネルとかと言えるそれだと思う。野乃野足軽は石を観て、その僅かに宿る力……いや命を見る。そしてそれは自身が宿した命だ。


(この生命にちょっとでも寄せれれば……)


 アースは調整と言ってた。野乃野足軽はそれを思い出して、自身の作り出した魂とその波長を合わせていく。するとなにかが耳に届く。最初は雑音混じりで、なにかよくわからなかった。けど、チャンネルを合わせるかのように波長を合わせていき、そして集める力も徐々に強めると次第にハッキリと聞こえるようなってきた。


(パ……パ……パパ……)


 そんな声が聞こえた瞬間、何かが野乃野足軽の胸に湧いてくる。高校生だから、そんな実感なんてないはずだと思ってたわけだが、自身が生み出したと感じてる命からそんな言葉を聴いたら、いくら高校生と言えど、そういう感情に目覚めそうだ。これが父性……とかちょっと野乃野足軽は思ってる。


(えっと……)


 よく考えたらこの子の声を聞こうとしてたが、こっちの声を届けようとはしてなかった。それとも生み出したのは野乃野足軽だし自分の声は理解できるのでは? とか思った。


「聞こえてる……から」


 そんな事をつぶやく野乃野足軽。けど別に石はなにか反応を示すわけじゃない。プルプル震えたりもしない。アクアなら沢山アクションしてくれたわけだが……


(どう……して)


(おい!? どうした?)


 なんかどんどんとその生命が小さくなっていく。それとともに再び雑音が多くなって、次第になにも聞こえなくなる。そして命の光が石から消える。本当にただの石ころに戻る。いや元々普通の人が見たらそれは最初から石ころだった。


 でも確かにこの石には魂が宿ってて……そして声だって聞こえた。一分に満たない時間だったけど、確かに触れ合った感覚はあった。


「おい、アース……命が……」


(消えましたね。しょうがないでしょう。そもそもが定着できるような素体ではなかったですから)


(お前、わかってたのか?)


 野乃野足軽はアースの淡々とした声にちょっと怒りをあげていた。だって少しでも自分が生み出した命だったんだ。それが一瞬でこんな……だってこれは命が死んだということと何が違うというのか……


(今のは魂を簡易的に増やすために即席で作った命です。長くは持ちません。だから早くしたほうがいいと言ったでしょう?)


(それは……そうだけど……)


 けど流石にこんなに一瞬だなんて野乃野足軽は思ってなかった。だからといってどれくらいの期間持ってくれればよかったのか……と聞かれたとしても、野乃野足軽は答えられないだろう。だってただ感情が先に出てるだけだから。


(あのくらいなら、慣れたらいくらでも生み出せますよ……)


 消えたらまた生み出せばいい。アースはそう言ってる。アースは命に執着してない。けど命という言葉は野乃野足軽には重い。なにせそういう教育を受けてきたからだ。実際殺したという実感があるかというと微妙ではあるが、でもいくらでも生み出していくらでも殺して良いんだ……と思えるような人間では野乃野足軽はなかった。

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