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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
275/830

274P

(さて、どうやって切り出すか?)


 そんなことを野々野足軽は考えてる。なにせ……だ。なにせチャブ氏は今回、ダウジングの棒を持ってきてない。いや、ここに来るまでで、一度もみてない。それぞれほかの人たち、それこそ猩々坊主に、ミカン氏、そしてアンゴラ氏は前回からそんなに変わってない。いや、なんかアンゴラ氏はなんかスッとしてるというか? なんかおしゃれな感じになってた。


 前はみんな枯れたというか……オタク的な感じがにじみ出てたと野々野足軽は思ってたが、今回はそれこそ、それこそアンゴラ氏だけはなんか合流した時からなんかおしゃれになってた。もしかしたら彼は自分に特別感を出したい……と思ってるのかもしれない。でもそれはある意味で野々野足軽は狙い通りなので、何も言う事はない。


 もしも、もしもチャブ氏が上手く使えなかったら、次は彼『アンゴラ氏』を使おうと思ってるからだ。チャブ氏は明確にダウジングという方法でしか使えないが、アンゴラ氏なら、なんでもできる――と思ってる。なにせその「力」が確定してないから、彼を通してなら、野々野足軽はどの力でも使える……と思ってるからだ。


 中二病とはなんとも便利な設定だろう……と思ってる。


 皆さん、一応同じフロアで、見える範囲で捜索をする――と言う感じになった。なにせこの場所では彼らは色々と不思議な経験をしてる。そしてついには一人の失踪者まで出てるのだ。それなのに一人で歩き回る……なんてのはそれこそ愚の骨頂だろう。でもさすがに全員で固まったまま、このビルを探し回るってのも効率が悪すぎる。だからワンフロアずつ、全員で見える範囲を別々に探す――と言うものだった。


 でもこれも一つ一つやってなんていけない。なので野々野足軽は切り出した。


「なにか、人を探す方法でもあればいいですね」


 ただなんとなく、冗談めかしてそんなこという子供――と言う体で野々野足軽は軽くそういった。そしてそれに野々野小頭が「何アホなこといってるのよ」とか返す。さらにそんな兄妹のやりとりに大人たちが「はははは」と乾いた笑いを出す。


 けどその中にチャブ氏はいない。そして残りの大人三人はチャブ氏を見てる。彼らは知ってる。チャブ氏は探し物が得意だと。そのダウジングでいくらでも『何か』を見つけた来たといってたからだ。


「チャブ氏……あの」


「やめろ」


 ミカン氏のその言葉にすぐさま何かを察したのか、チャブ氏はそういった。きっとミカン氏が何を望んでたのか、それがわかったんだろう。けどそこにさらにアンゴラ氏が続くよ。


「チャブ氏、今は非常事態だ。君の力でか弱い少女が救えるかもしれないんだ」


「それならあんたがやればいいだろう! 俺のダウジングは……俺のダウジングはそんな大層なものじゃないんだよ……」


 そういってチャブ氏は壁の方へ行ってしまう。そしてそれを見て、野々野足軽達は互いに視線をかわす。前の時の出来事で、チャブ氏は自信を無くしてる。そしてそれはどうやら戻ってきてない。でも……だ。でも……と野々野足軽は思ってた。


(でも、彼はここにきた)


 それってつまりは心配が勝ったからだだろう。いい人なんだ……そう思った。でもチャブ氏は自身の力というか、ダウジングへの自信なんてなくなってる。そもそもかきっと大げさに言ってただけなんだと思われる。


 だからここで頼られても困るってことだろう。さてどうしたものか……


「今、草陰草案嬢を見つけられるのはおぬしだけだと思うぞ」


 そんな風に猩々坊主がいった。それに大人たちは同意する。けど……


「俺は……アンゴラ氏みたいな『本物』じゃない。力なんて元からなかったんだよ。だから本物に頼んだ方がいい。あんたなら……きっとできる」


 そういってチャブ氏はアンゴラ氏を見て頼んできた。プライドとか何もかも捨ててるのか……それでも大人として知り合いとして来てくれたんだろう。実際野々野足軽的にはこのまま乗せられてアンゴラ氏がやってくれてもいい。


 でもアンゴラ氏は首をふる。


「すまない。俺の力はまだ安定してないんだ。それに何かを探すのは得意じゃない。それはあなたの領分だ」


「ふざけんな。それにもってもきてない」


「そ、それなら――」


 そういってミカン氏がおっきな鞄をガサゴソとする。すると出してきた。もちろんそれはダウジングの棒だった。用意がいいことで。でもチャブ氏もそれを簡単に受け取ることはしない。むしろ差し出したそれを彼は手で払った。


 安っぽいステンレスみたいな音が空しくこの場に響く。

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