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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
174/816

173P

目の前に野々野足軽の顔がある。彼は平賀式部を見つめてた。その目は真剣だ。平賀式部はこれまで感じたことがないくらいに、鼓動が早まってた。平賀式部は自分が冷静であんまり感情の起伏がない……いや感情を制御できる人間だと思ってた。教室でいつも集まってピーチクパーチクとけたたましく宣ってる女子とは違うと平賀式部は思ってた。むしろ同じ女性というだけで、一緒にされたくなかったほどだ。


 けど今はどうだろう? 実際、教室でいつも騒がしかった女子と今の自分は何が違うのか? と平賀式部は気づいてるのだろうか? 


(でもこんな風になれるのなら……ちょっとは理解できるかも)


 恋をすると世界の見え方が変わるという。それは本当かもしれない−−と平賀式部は思ってた。今まさに平賀式部の世界の見え方が変わってるからだ。視界いっぱいにある野々野足軽の姿。その瞳が真っ直ぐに平賀式部は自分に向けられてることへの幸福感でいっぱいだった。


(せっかくお付き合いできたんだから、次はキスだよね。その次は……)


 とかここ一週間くらいは常にその妄想でいっぱいだった。いや、平賀式部的にはそれはもう妄想ではない。なにせ付き合ってるという事実があるのだ。そうなると次に目指す場所として、キスやさらにその先だってあながち妄想ではない。付き合ったことでそこへの道筋は可能性として出てきたんだ。付き合ってもないのにそれをやる人種というのはいるが……平賀式部はそんな股の緩い女ではない。


(こういうのは雰囲気に任せてっていうけど……なるほど)


 平賀式部は自然と見つめ合いつつ、目を閉じた。文字ばっかりの文学とかを読んできた平賀式部にはなかなか難しかった想像。でも自然とそうやった。これはつまりは人の本能は自然と雰囲気を感じれるということだろう。


 真っ暗になった平賀式部の視界。視界がなくなったことで、いろんなことが逆に伝わってくる。自分の鼓動はそうだし、手のひらにじっとりした汗の感覚。いや手のひらだけじゃない。平賀式部には服の下で感じる背中の汗を感じてた。


 それに平賀式部は自分だけじゃなく目の前の野々野足軽の事だってわかる。それは呼吸だ。そしてそれが近づいてくるのが見えてなくてもわかった。人間の感覚もなかなか侮れない……と平賀式部は思った。期待が高まる。きっともうすぐ二人の唇は重なるんだろう。


平賀式部にはその核心があった。


「今日のおやつは何?」


「え?」


 目を開けると間近にある野々野足軽の顔。それにドギマギしつつ、さっきの野々野足軽の言葉を咀嚼するのに時間を要する平賀式部だった。だって二人の距離はキスする1秒前くらいである。

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