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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
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147P

教室で教師がかつて黒板だった巨大なタブレットを操作しながら授業を進めてる。そこにはまずは生徒が持ってる小型……と言っても10インチサイズのやつだから女生徒が持ったりするとそこそこデカい。


 だが複数の教科に合わせて幾つもの教科書を持ち歩いてた時代からすると、これ一つになったことで、ずいぶんと軽量化されただろう。だけど残念かな。その時代を知らない今の学生たちはそのありがたみとかを知る由はない。


 教師が使う巨大なタブレットと生徒が使う小型のタブレットは同じ画面を映してるが、これは別に同期してるわけじゃない。なにせそうなると生徒が書き込むとか出来なくなる。


 それに教師が操作したら勝手に画面が変わるだろう。実際教師は注視する部分とかを大きくしたりするから、生徒のタブレットでも勝手になる方が便利かもしれない。けどそこは生徒の自主性というか個性を育てるためにもそういう風になってない。別に学校という在り方の形が問われる時代でも、こうやって登校して同じ場所にあつまり、そして同じ場所に詰め込んで同じ授業を受けることをやってるのは、このあり方に意味があると思ってる……価値があると信じてるからだ。


 学校というコミュニティがリモートとかになってなくなると、一体若者は昼間に何をするようになるのか……可能性はたくさんあるが、学校という場所に詰め込んでる方が安心だし、まとめて管理できる……とかがきっと大きい。


 野乃野足軽はタブレットに先生の言ってる事を書き込んだり、消したり、教科書部分を小さくして、白い状態にして白紙のページを開いたりして、そこに色々と書いてる。


 それは実際授業とは関係ないことだったりする。それこそ力のこととかだ。ちょっと考えれば学校から支給されたタブレットは学校のものなわけで、その画面は教師がその気になれば、向こう側からみれたりもする。


 事実、数学とかそういう計算させて結果をみて、過程を教える……とかいう授業だと――


「そこの君、解いてみて」


 ――とかあるだろう。それは今の時代にもある。けどわざわざ前に出て書き込む……なんてことはしない。そんな時は指定された生徒の解いた画面を教室の前の巨大なタブレットに映し出すのだ。実際、それには教師の操作と、そしてそれを所有してる生徒の許可が必要だが……緊急事態とか抜け穴とか……そういうのは色々とあるものだろう。


 だから野乃野足軽の行為はなかなかに危なかったりするが……実際野乃野足軽のノートを見られたとしても大事に至ることはないだろう。恥をかくのは野乃野足軽だけだ。


 それはきっと見られたとしてもこう思われる……「黒歴史ノート」だと。


「ふふん、ふんふん」


 野乃野足軽は上機嫌にちょっと鼻歌を口づさんでる。それにはある理由があった。それは平賀式部のためだ。平賀式部は今、野乃野足軽の力に包まれてる。そのおかげか、彼女はウツラウツラとしてた。平賀式部は今、とても心地よい感覚になってる。今にも夢への船を漕ぎそう……というかもう漕ぐ寸前というか……そこまでいってる。


 彼女には野乃野足軽の力が快適な空間を作り出し、そしてリラックス効果のある匂いを嗅がせてる。実際それがどんな匂いなのかは野乃野足軽にもわからない。けどきっとそうなのだ。


 そして頭や心を休息させるためには他にもどうすればいいか。もしも夢に誘っても悪夢では意味がない。だから幸福な夢を見させる為に……というよりも、幸福感を伝える為に野乃野足軽は自分が楽しいと思える事をやってるのだ。


 なにせ何が幸福なのかは人それぞれだろう。だからこそ、幸福感を伝えれば良いのでは? と野乃野足軽は考えた。だからこうやって自分が楽しいとおもってる力の事を考えてその可能性に夢を見てるのだ。


 それを考えてるときが野乃野足軽は一番楽しいと思ってる。だからこそ、その楽しいと思える幸福感を、野乃野足軽は平賀式部へと伝えてた。今の平賀式部には教師の声も、そして時折向けられる色んな視線も全て感じてないだろう。


 そういう風に隔絶した世界を野乃野足軽が作ってる。遂に瞼が閉じて、顔が机にぶつかりそうになった時に、そっと力をつかってその頭を支えてあげる野乃野足軽。そして声にならない声で――


「おやすみ」


 ――と言った。

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