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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
144/818

143P

夜風が染み渡る。野々野足軽は眼下に見える街中の光を見つめて物思いに耽っていた。実際、思春期の男子ともなれば、こういう夜はいくらだってあると思う。一体何を考えて夜の闇とかを見つめるのかは、それこそ人それぞれだろうけども。


 ある男子はきっと好きな女子を思って……あんなことやこんな事をおもったりするだろう。あるものはきっと将来……いやこの年なら明日までも不安だったりするかもしれない。


 普段は普通に学校生活を送ってたとしても、明日は何がおきるのかわからない。そんな不安……明るい部屋から、暗い外を見て不安を意味もなく大きくするのもまた青春のような? 


 けど野乃野足軽はちょっと違ってる。なにせ彼は別に部屋の中から街を眼下に見下ろしてるわけではない。そもそもが眼下に見下ろすにはそもそもが高いところに住んでないと駄目だろう。高層マンションとか普通のマンションでも高層階にいないとそんなことは出来ない。


 けど野乃野足軽の家は一軒家である。それも二階建てだ。普通の……本当に普通の家屋なのだ。もちろん、野乃野足軽の両親はこの家を作る時にいっぱいの夢を詰め込んだはずだろう。でも野乃野足軽から見たら普通の家だ。それが実際はかけがえのないものだが、それにはまだこの年頃ではわからないものだろう。


 でも別に野乃野足軽だって不満があるわけではない。ただ夜風に当たっていたかったからこんな事をやってるのだ。


「人って、わかんないな」


 そんなつぶやきは夜風に消えていく。その声がこの風にのって誰かに届く……なんてことはないだろう。


「面白いかもしれないな」


 ちょっと考えた風に乗る声ってやつを試してみたくなった野乃野足軽だ。野乃野足軽は端的に言うと今、夜空にいる。訓練する中で、浮遊は何と言っても夢だろう。野乃野足軽の? いや違う、人類のだ!! と声高々に言いたいくらいに。


 まだまだどっかの某漫画の様にビュンビュンと飛び回る……ということは野乃野足軽は出来ない。けど毎日の訓練も相まって、ゆっくり浮く……ということはかなり出来る様になってる。


 だからこうやって時々、夜に空へと上がって、そこで眼下を見下ろすことで世界を見てるのだ。普通ならこんな風景はなかなかに見ることは出来ない。それこそタワマンに住むか、山とかに登るか……それか東京タワーとかスカイツリーとかそんなところにお金を払って昇って見る……とかじゃないと無理だろう。


 それを野乃野足軽はいつだっておてがるに出来る。空から世界を見ると、自分の悩みなんてちっぽけな事なんだ――と思える。それに浮いてる自分を感じることで、自分が特別なんだ……と思えて実感できる事が、野乃野足軽は嬉しかったのだ。


 そしてその日以来、巷では夜な夜な変な声が聞こえる……という噂が持ち上がった。いきなり声がきこえて振り返っても、そこには誰もいない……とかいう恐怖の都市伝説が広まったのは一体誰のせいなのか……それを知るのは一人しかいなかった。

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