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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
99/221

第98話/××× Holic

森川愛.side


同い年の藍田さん話すのはとても楽しく、等身大の私で入れる存在だ。

笑った顔も可愛いし、私は鮎川早月が大好きだからリアルの早月が目の前にいて嬉しい。


そして、藍田さんの隣にいる佐藤小春役の松本さん。なぜか、いつも私に対し不穏なオーラを出す不思議な子だ。

でも、私の周りにはいないタイプで面白そうだから絶対に仲良くなりたい。


そんな2人とこれから暫く仕事を一緒にすることになり、これまで色んな仕事をしたけど、今回の仕事が一番ワクワクしている。

きっと、藍田さんと松本さんのお陰。この2人の関係性が楽しくて堪らない。



私は15歳で芸能界に入り、プライベートなんて皆無で仕事ばかりやってきた。分かっている。今が大事な時期で、仕事を沢山できることはありがたいことだと。

でも、この4年間ずっと鬱々としたものを溜め込んできた。仕事、仕事、仕事で…


いくら好きで入った芸能界でも、憧れていた女優の仕事をやれても疲れてしまう。

そんな日々の疲れと鬱憤があっても私は必死に笑顔を作らないといけない。これは女優として全うしなければいけないこと。


そして、恋をする暇など与えられず、異性の共演者と話すだけで相手のファンから敵対視され…恋愛禁止のアイドル並みの雁字搦めの厳しさをずっと耐えてきた。


抑制だらけの人生なんてつまらない。そんな時に出会った藍田さんと松本さん。この2人は私の心を弾ませてくれる。

2人は対照的で、不思議な仲で、私の普通と2人との普通はイコールにならない。


いつも眉間に皺を寄せている松本さんは藍田さんと話す時だけ笑顔を見せる女の子。

芸能界は常に仮面を被らないといけない場所だ。私も常に仮面を被っている。

そんな常識を打ち砕くのが松本さんで…


面白くて堪らない。こんなにもあからさまに表情に出る子なんていないよ。

別に私を嫌っているわけではなく、藍田さんを取られたくないオーラが出ており、拗ねている顔が可愛くてニヤニヤしてしまう。



撮影とインタビューの合間も私は藍田さんと沢山話をした。藍田さんはサッパリとした性格で気さくだし、話しやすい相手で楽しい。

そんな私達をジッと見つめる松本さんが可愛くて何度も口角が上がるのを我慢した。


でも、楽しい時間ほど短く、全ての撮影とインタビューが終わり、次の仕事のためにマネージャーに急かされ席を立つ。

松本さんとは殆ど話せなかったけど、わざと沢山藍田さんと話して拗ねさせたかったら…


なんて、私は悪い子だね。でも、松本さんが面白いから仕方のない事で我慢できない。

それに、直感だけど松本さんは多分…演技に興味がない。演技は凄く上手いのにね。


きっと、事務所に言われてオーディションを受けたのだろう。本当、面白いよ!

演技の才能があるのに本人は演技に興味がないなんて神様のイタズラすぎる。


私がいなくなった途端、藍田さんに引っ付き、笑顔で楽しそうに話す松本さんの態度の変わり身に笑ってしまいそうだ。

仕事以外のことで変化があるのは久しぶりで、心がワクワクしている。


近い距離感で話す2人を観察するだけで面白く、2人のバグった距離感は私にとって未知の世界でドキドキしている。

私が知らなかった同性同士の距離感。演技でもないリアルは恋愛未経験の私には強烈で…



最高のエンターテイメントだ。



2人は磁石のS極とN極みたいに引き合っており離れようとしない。

これまで沢山異性同士の恋愛ドラマや映画を観てきた。勿論、同性同士の映画も見た事がある。全く、比べものにならないね。


作り物とリアルは全然違う。血液が沸騰するぐらい体の熱が上がり、私を興奮させる。

仕事以外つまらない人生を過ごしてきた私は今、人生で一番興奮している。


私は甘い蜜を知ってしまった。私の奥底にあった開いてはいけない扉を開けてしまった。

きっと、この最高のエンターテイメントから私は抜け出せない。重度の中毒者だから。

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