表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
98/221

第97話/クリア硝子の空虚

今日は雑誌のインタビューを受ける日で私と梨乃はよっちゃんが運転する車で現場に向かう。芸能人だな…ってしみじみするのは変な話だけどやっと芸能人らしくなってきた。

今日は駅で知らない人に何度もチラチラと見られ、初めて顔バレと言うものを体験した。


早月の子だ!って大きな声で言われた時はちょっと焦ったけど嬉しさの方が勝った。

知らない女の子に手を振られ、初めてファン以外の子に手を振りかえし、テレビの影響力を知る。でも、勝手に写真を撮るのはやめて欲しい。ビックリするし、嬉しくない。


コートのポケットに入れている私の携帯には今も昔の友達からLINEが来ており、うんざりする。一々返事するのが面倒だし、でも返事をしないと悪口をネットに書かれそうで。

後で、簡素だけど返事するしかと思いながら車の窓から流れていく景色を見つめる。


移り変わりが早い時間の流れは、私の目に映っている景色と一緒だ。

今まで苦しくて、不安で、しんどいことが多かったけど、今は幸せでやっと夢に向かって進んでいる。でも、これから先どうなるのかなと不安があり、未来がまだ見えない。


きっと、考えるのが怖くて想像できないのかもしれない。ずっと地下から抜け出しくて必死にがむしゃらに今までやってきた。

やっと明るい外の景色を見れるようになったけど、時の流れのスピードに追いつけなくて景色が次々と変わっていく。


変わっていく世界が怖い。もう元には戻りたくないけど、新しい世界は私に未知すぎる。


「みのり」


「何?」


「呼んでみただけ」


「何それ〜」


「へへ」


梨乃に声を掛けられ、やっとリアルの時間軸に戻ってきた。梨乃の声を聞くと安心感が私を包む。私は1人じゃない。梨乃とこれから未知の世界と戦っていくんだと。

勿論、美香や由香里とも一緒にだけどドラマ期間中は梨乃が私の相方…ではないか。私の相方は最初から梨乃だった。


「梨乃と一緒に仕事ができて嬉しい」


「私もだよ」


私が唐突に梨乃に対して今の思いを言ったから驚かれたけど笑顔を見せてくれた。

梨乃がそばにいてくれるだけで安心するし、心強い味方を得た気分だ。

よく、梨乃は私の目力のことを言うけど梨乃の目も力がある。強い意志を感じる。


梨乃がいればって依存みたいだけど、私は見た目より弱い生き物だ。よく、クールなタイプとか言われるけどそんなことはない。

すぐに悩むし、臆病で、散々悩んで決めたことにぐちぐちと悩む。それに、やっと前に進んだのに今も未来が怖い。





松本梨乃.side


現場に着き、隣を歩くみのりを見つめる。髪を切ったみのりに見慣れてきたけど、今の髪型のみのりが好きすぎて見つめてしまう。

顔が良くて、優しくて、頭も良くて…全てが完璧なみのり。私との差が凄すぎて虚しくなるけど、みのりへの好きが止まらない。


やだな、、完璧な2人に囲まれてしまった。みのりはいいけど、森川さんは…

みのり同様、顔が完璧で、性格も明るい人で、スタイルも良くて人気女優。私が持っていないものを沢山持っている人だ。


これから一緒にインタビューを受けるから森川さんと一緒にいるのは仕方ないけど、みのりと楽しそうに話す森川さんに嫉妬する。

分かっている。ここは仕事場で、森川さんも仕事をしにきているだけだと。だけど、心が狭い私は過剰反応をしてしまうのだ。


私の人生は劣等感だらけで、今まで虐められていた時も私が悪いんだと落ち込んでいた。

でも、虐められる理由が分からなくて苦しくて、アイドルになって毎日が明るくなった。

みのりがいたから…私は強くなれた。みのりがいたから今の私がいる。


みのりを絶対に取られたくなくて、森川さんを見つめる。ライバル視としての意思表示。

みのりを誰にも渡さないための、私なりの威嚇で私は負けないという宣言。


例え、人気女優でも引かない。みのりは生まれて初めて好きになった人で、生まれて初めて奪われたくないと思った人。

私はみのりを取られたら生きていけない。どれだけこの感情が重いと分かっていても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ