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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第92話/欲望と野望のレイン

松本梨乃.side


私の一番はみのり


だからこそ、みのりに近づく森川さんが苦手だし目の敵にしてしまう。森川さんは可愛くて美人で、私とは対照的な華やかさがある。

もし、この人がみのりを好きになってしまったらとずっと敵対視していた。


でも、みのりの言葉にハッとし私は頭を切り替える。私達はこの場所に仕事をしにきている。そうだよ、私は仕事をしにきた。

よくドラマなどで恋にうつつを抜かす女の子に対して馬鹿だな、情けないなって思いながら見ていた。まさに今の自分だ。


みんなプロとして仕事をしている。真剣な表情で主役の高橋君がインタビューされる姿を見るみのりを見ながら私は仮面を被った。アイドルの松本梨乃になるため。

みのりはプロとしてこの場にいる。私もアイドルのプロとして頑張らないといけない。


高橋君のインタビューが終わり、次は私の番。仮面を被った私は笑顔を作り、ドラマに対する意気込みを語った。

凄いよね。仮面を被ると嘘が口からペラペラと歌うように出てくる。演技なんて1ミリも興味ないしドラマなんて出たくもないのに。


原作漫画は本当に面白い。でも、私は女優の仕事に全くやる気もないし、やりたいとも思わない。グループとみのりのために仕方なくやるだけ。それに今回だけだし。

約2ヶ月半、ドラマの撮影中は佐藤小春の仮面を被り、私は演じきる。そして…


この期間中に更にみのりとの距離を縮める。美香や由香里がいないし、私はみのりを独占したい。本当は早く告白したいけど、振られるのが怖くてまだする勇気はない。

私はみのりに振られたら、失ったら…大好きなアイドルでさえ出来なくなるからだ。


だから慎重にいかないと。同性同士の恋はハードルが高く、みのりが今まで付き合ってきた人達は男の人ばかりだ。

私が越えなくてはいけないものは余りにも高すぎる。でも、諦めたくない。


私のインタビューが終わり、一度みのりの方を向くとみのりと目が合い、笑顔を見せてくれた。頑張ったねって口パクで言ってくれて私はこの一言でもっと頑張れるよ。


みのりのために頑張れる





藍田みのり.side


梨乃は凄い。さっきまで緊張してオドオドしていたのに今はもう笑顔でインタビューを受けハキハキと応えている。

私はこの切り替えが出来る梨乃に憧れている。普段は大人しいのにダンスをするとカッコよくて目を惹くオーラを醸し出す。


今もその状態だ。梨乃はグループで一番女優向きなのかもしれない。だから、ヒロイン役を掴み、原作者からオファーが来た。

きっと、奏多みどり先生は梨乃の才能を見抜いていたんだろうな。そんな凄い人をファンに持つ梨乃は凄いし羨ましい。


私も梨乃に負けないように頑張らないといけない。これ以上引き離されたくないし、後悔する人生だけは送りたくない。

最後に回ってくるインタビュー。四番手だからこそ、しっかり頭で整理してどのように話すか考える時間がある。


四番手も悪くないって鮎川早月役を掴んで思えるようになった。下克上しかなく、下に下がることがない数字は私を奮い立たせる。

ここは勉強の場でもある。他の人達のインタビューをしっかり聞き学ばないといけない。

私は仕事が大好きだ。恋に1ミリも興味がない私は仕事だけをしていたい。


「それでは、鮎川早月役を演じる藍田みのりさんよろしくお願いします」


「はい。お願いします」


私はこの仕事に命をかけてもいい。高校の友達はアイドルを目指す私を表面上は応援していたけど内心では馬鹿にし、私は散々悔しい思いをしてきた。

私の味方はいつも美沙だけで、私はみんなを見返したい。そして、学歴でしか判断しないお母さんを必ず見返したくて頑張ってきた。


この熱い思いは私の活力だ。


インタビューする記者の人にあゆはるについて聞かれる。この人は原作をきちんと読み、この漫画について詳しい。

まさかここであゆはるについて聞かれるなんて思わなかったけど、これはチャンスだ。


私と梨乃は同じアイドルグループ。さり気なくグループについても語り、私と梨乃はあゆはるみたいな関係性だと語った。

対照的だった2人が出会い仲良くなり、絆を作っていく。小春と早月は翔平が縁になり、私と梨乃はアイドルが縁になった。


この縁がなかったら梨乃とは高校も違うし、知り合えてないし仲良くなっていない。

奏多先生のお陰で縁の大事さを知った今、私は縁を大事にしたいと思っている。


「人気のコンビですよね」


記者の言葉に私は笑顔で「はい」と言う。このあゆはる人気を使って人気を勝ち取る。

私はファンの人が望む《あゆはる》をプレゼントするよ。だから、応援してね。

私には野望しかない。野望があるからこそ頑張れるし、上に行きたいと強く願う。

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